彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「まあね。こんなところで会うとは驚いたな。さすがハロッズ」

「「あの……」」

 お互いで口を開いて、びっくりして目を合わせた。

「なに?」

「あ、いいえ、お先にどうぞ……」

「僕はいいんだ……なに?」

「あ、いいえ、私もいいです……」

 参事官は私を牽制していたと思う。日奈さんというのは誰なんだろう。聞きたかったが聞けなかった。奇妙な沈黙がおりた。

「私、母と弟にお土産を買いたいんです。あと、会社の人にも買います」

「そうだったな。お土産は色々あるから、選ぶのが大変じゃないか?」

「実は大体考えてきたんです」

「すごいな」

 まずはイギリスと言えば紅茶。それと、ハロッズのショッピングバッグ。持ち歩けそうなロゴの入ったお洒落なものを選んだ。

 弟には大きなスポーツタオル。母にはマグカップとお皿のセットなども買った。

「藤堂さんのお母様のプレゼントはどうします?どういったものがお好きなんですか?」

「そうだな、花が好きなんだ。服も花柄とか好きだな」

「本当ですか?私も好きです!実はそういうものをまとめている百貨店があるので、時間があれば行きたいと思っていたんです」

 彼は腕時計を見て、私を見た。

「どこに行きたいの?遠慮せず言ってくれればいい。まだロンドンアイには二時間半ぐらいある。間に合うと思うよ」

「リバティロンドンっていうデパートです」

 彼は携帯で調べた。

「リバティロンドンって確か……ああ、ここか。オックスフォードサーカスから近いんだな。ピカデリーサーカスからも歩ける。ここなら近いし大丈夫だよ」
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