彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「琴乃、僕は君と何も考えずにこうなったわけじゃない。僕はもう君を手放したくない」

「玲さん……」

「僕はおそらくあと二年くらいはイギリス勤務だと思う。遠距離になるけど、君さえ許してくれるなら僕は将来を見据えて交際したい。毎年年末には必ず帰国する。今は顔を見ながら話すことも可能だし、お互いの気持ちさえあれば続けられると思うんだ」

「はい」

「ああ、でも心配だ。琴乃は隙だらけなんだよ」

「私、日本で声なんてかけられたことありません」

「いや、そんなはずはない。日本では隙を見せないようにしていたのか?」

「隙というか、そんな暇はないというか……私、具合の悪い母と中学生の弟がいるんです。正直、生活に精一杯なんです」

「お父さんは亡くなったんだよね。最近じゃないのか?」

「高校が決まってすぐでした。母の具合がだんだん悪くなって働くのが無理そうになって来て、私は大学を中退して父のいた会社の系列会社に入れて頂きました」

「そうだったのか……」

「あ、そんな顔しないでください。それなりに楽しくやってました。弟もバスケットの選手を目指して来春から寮暮らしの高校に入りますし、あの子の頑張りで全部無償のところなんです。ちょうど私の人生を考えなおそうと思っていたところだったんです。実は弟が独り立ちできるまでは恋愛とか考えていなくて……」

「じゃあ、僕とのことはタイミングが良かった?」

「はい。玲さんのご家族は、ご兄弟はいるんですか?」

「ああ。父は今外国語の大学教授なんてやってるけど、昔はサラリーマンで君のお父さんと同様に海外へ赴任していた。琴乃よりひとつ下の妹がいる。彼女は公務員だ」

「お父様の影響で玲さんは外交官になったの?」

「そうかもしれないね。僕は中学卒業までは家族とアメリカにいたから、自然に話せるようになったんだ」

「すごい」
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