彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 * * *

 翌日から会社へ出た。

 驚くことに本部長がいなくなっていた。突然また違う関連会社に行ったと灰原部長が教えてくれた。

「いや、僕が本社の方へ本部長のことでお話がありますと言ったらさ、本部長はそちらから異動になりますが、伺った方がいいですかと言われてね」

「え?」

「いや、いなくなるならそれで問題は解決すると思って、いつからですかって聞いたら本部長の出張から戻ってくる今日からだっていうじゃないか。驚いたよ」

「そうだったんですね」

「もしかして自分で本社に連絡した?」

「してませんよ!そんな勇気があるならとっくに部長へ先に話してました」

「そうだよね。いや、ほら、君の場合亡くなったお父さんは本社勤務だっただろう。本社に知り合いがいるのかなと思ってね」

「父を知っている人はいると思いますが、私はよく知らないんです」

「じゃあ、ただの異動かな?それにしてはなんかね……」

 玲さんが言っていたことを思いだした。彼が本社にセクハラのことを告げたのかもしれない。

「それでね、本部長がいなくなって僕がその代わりもすることになっちゃったんだよ……はあ……本部長がいなくなったのはいいんだけど、僕がしりぬぐいさせられるというのはついてないよ」

「そうだったんですね……」

「とりあえず、高木君に僕の手伝いをしてもらうから、君は予定通り自分の仕事に戻ってくれていいよ」

「はい」

 フロアに戻ると、高木さんと田沼さんがいた。

「おかえりなさい、先輩。楽しかったですか?」

 私はお土産を渡しながらお礼を言った。

「うん、とっても楽しかった。あ、高木さん……」
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