彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「じゃあ、まさか、本当に彼女がいるとか?そっちでどうやって作るのよ。嘘ばっかり」

「嘘じゃない。彼女は最近できたんだ。もう日本に帰ったので、遠距離だけどね」

「誰なのそれ?」

「まあ、今度帰ったときにでも紹介するよ」

「なによ、信じられない。本当にいるなら名前くらい教えてよ。歳はいくつ?教えてくれないなら信じないからね」

 相変わらずうるさい。日奈を牽制するためにも教えた方がいいかもしれない。

「名前は蔵原琴乃さん。25歳で里香のひとつ上だな」

「へえ、本当に彼女出来たんだね。蔵原さんっていうんだ。私とほぼ歳が一緒なんて、お兄ちゃんそんなに私が好きだったんだね」

「何を言ってるんだか……彼女は里香と違って大人だ」

「じゃあ、蔵原さんがどんなに私より大人か確認するから、帰ってきたら絶対会わせてね。」

「機会があれば紹介するよ。じゃあな」

「もうお兄ちゃんたら里香に相変わらず冷たい。里香の近況は聞いてくれないの?」

「自分から話さないところをみると、まだ彼氏ができないんだろ?まあ、頑張れ」

「頑張ってるよ。でもね、彼、いくら誘っても一緒に映画へ行ってくれないの。どう思う?」

「里香。押してだめなら引いてみろっていうことわざ知ってるか?」

「え?」

「じゃあな。母さんたちにもよろしく」

 電話を切ってため息をついた。日奈と里香は猪突猛進。引くことを覚えれば少しは違う。

 僕は琴乃に内緒で本庁の仕事を理由に来週日本へ一日だけ戻る予定だった。

 彼女に会えるかどうかはまだわからない。仕事が忙しくて会えない可能性もあるから、期待させないために黙っていた。

 彼女の好きなあのデパートでお土産に彼女の好きそうな服を買った。ご家族へのお土産も用意してきていた。
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