彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「実は彼女のイギリス観光をご案内したんです。その際、彼女が気に入っていた商品がこの間偶然手に入ったのでお持ちしました」

「そうですか。ありがとうございます」

「私は明日の朝、またイギリスへ戻りますので、ここで失礼します。琴乃さんにどうぞよろしくお伝えください。僕の方からもメールしておきます」

「はい。ありがとうございました。お通しもせず、申し訳ございません。どうぞお気をつけて」

 丁寧なお母さんに見送られて、僕は駅に向かった。

 琴乃に連絡すると、本当に驚いていた。 

「どうして事前に教えてくれないんですか?」

「仕事が忙しいから会えない可能性もあると思っていたんだ。一目会えればと思って、驚かせるつもりだったんだ。すまない」

「そうだったんですね……すみません、何もわかっていなくて勝手なことを言いました」

「こちらこそすでに休んでいたお母さんを起こしてしまったようで悪いことをした」

「あの、玲さん。母に交際のこと話しましたか?」

「いや、お母さんは何も知らなかったようだから伝えていないよ」

「ごめんなさい。イギリスでのことはあまり話していないの。理由は今度会ったときにゆっくり話します」

「わかったよ。じゃ、僕は明日早朝の便で帰るからね。また連絡するよ、琴乃」

「はい、長旅お気をつけて」

 この様子はやはり何かあると思った。しかし、その時はそんな重大事だと思っていなかったのだ。

 * * *

「おい、玲。帰国していたらしいな」

 イギリスに戻ってすぐ父から電話があった。

「なんで知ってるの?」

 なんとなく想像はついた。外務省に父の知り合いは多い。帰国申請が出ていたのを誰かに聞いたのだろう。

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