彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「いつも的確なアドバイスをくれるから感謝してる」

「琴乃」

「ん?」

「大丈夫だよ。なんとかなる。どうしようもなくなったら私がお母さんに話してあげる。そのうち、一度お母さんに紹介して。仲良くしておいた方が無難かもしれないからさ」

「うん、ありがとう、佳純大好き!」

「はい、はい……よくこんなんで、ひとりで家族を支えて来たよね。これだから、彼も琴乃が手放せないのかも。琴乃って結構天然入ってるんだよ。男性社員が遠巻きに見てるの気づいてないの?」

「何言ってんの?それ絶対私じゃないよ、佐伯さんを見てるんじゃない?彼女可愛いよね」

 うちの部署の新人の佐伯さんは美人。入ってきたとき大騒ぎになった。

「はー。そういうところが無防備というか、だから玲さんに三回も救われてんじゃないの?ホント、指輪はきちんと左手にしたほうがいいんじゃない?」

 玲さんには左手の薬指にしろと言われたが、さすがにできないので、右手の薬指にいつもしているのだ。

 効果はあるか微妙だけど、彼が側にいるような気がして指輪はつけっぱなしにしていた。

 結局、佳純の言う通り彼との交際は内緒にした。玲さんのことは、結局お母さんがあれから何も聞いてこないから何も話していないのだ。きっと聞きたくないんだと薄々感じていた。

 * * *

 年末になり、弦也が今日帰ってくる予定だった。

「姉ちゃん、ただいまー!」

「おかえり、弦也。え?また背が伸びてない?」

 どういうこと?別人のようだった。男の人って感じになっていて、昔の幼い弦也はどこかへ行ってしまっていた。

「そうかもね。10センチ以上伸びた。178センチ。姉ちゃん、ちっちゃくなったな。可愛い」

「はあ?」

「あはは……姉ちゃんの焦げた唐揚げ楽しみだな」
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