彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「わかりました。焦げた唐揚げ作ればいいのね」

「冗談だよ。ねえ、お母さんは?あれから大丈夫だった?」

「うん。一応ね。部屋にいると思う」

 弦也が帰ると聞いて、お母さんは朝からとてもテンションが高かった。ご機嫌だ。

 そういえば、今日の夜の便で彼も日本へ帰ってくる。そのままご実家に戻ると聞いている。私と会うのは年明けになりそうだ。

 その日の夜、お母さんが部屋へ戻った後、私は弦也の部屋を訪ねた。ノックしようとしたら中から話し声がした。

「菜穂、初詣なら一緒に行けると思う。あ、うん。姉ちゃんには話しておくよ」

 菜穂って言った?女の子と話してる!もしかして、彼女?声が聞こえなくなったので、部屋をノックした。

「どうぞ」

「弦也、もしかして今の電話の相手って彼女?ごめん、少し聞こえちゃった」

 真っ赤になった弦也は頭を掻いている。図星だったようだ。

「マネージャーなんだよ。最近付き合いだした。そのうち、姉ちゃんにも会わせるけど、初詣の時に会うから挨拶する?」

「ううん、いいよ。普段ふたりでいられないんでしょ、せっかくだから満喫したら?」

「うわあ、姉ちゃん察しがいいな。それより、姉ちゃんこそ誰か出来た?」

「え?」

「うわあ、赤くなった。やっぱりな。なんとなくそんな気がしたんだよ。姉ちゃん明るくなったもん」

「そうかな?」

「そうかなじゃないよ。俺だけずるいぞ。教えろよ」

「……お母さんには黙っておいてくれる?」

「話してないの?」

「遠距離なの。相手は海外にいるから……」

「えー?海外!」

 大きな声を出したので、私は弦也の口をふさいだ。もぐもぐしてる。
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