彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「ええ。ごめんなさい。弟も久しぶりに帰ってきているから無理です」

「弟さんも同じ時期に帰るかもしれないと聞いてからすぐ予約したんだ。早めにチェックインしたいと相談してあった」

 確かに、そうなんだろう。まだ二時前なのにすんなりとチェックインした。

「……どうして?」

「どうして?琴乃と一晩中一緒ならいいけど、それは無理なんだから、こうするしかない。初詣より先に君を感じたい」

「え?うそ……」

 彼は私の手を握り、エレベーターホールへ歩いていく。

 エレベーターに入ると私を抱き寄せてすぐにキスを仕掛けた。久しぶりのキス。止められなかった。

 誰か来たらと思ったが、この時間だからか、到着階まで誰も入ってこなかった。

「……ん……あ……」

 彼は私を抱き寄せるとそのまま部屋へ行った。まさか、スイート?

「久しぶりなんだからたっぷり愛したい」

 彼が部屋を開けると、信じられないような光景が広がっていた。白一色の部屋。天蓋付きのキングベッド。白鳥のぬいぐるみがつがいで置いてある。

 彼に抱き上げられて、ベッドへ。もう止まらなかった。お互いで服を脱いであっという間に抱き合った。

 そのまま寝落ちしてしまい、彼の声で目が覚めた。

 隣の部屋で電話をしているようだった。

『確かに日奈は家族公認……今の彼女は交際を隠して……いや、まだわからない……わかったよ、後で連絡する』

 琴乃は扉から漏れ聞こえる言葉に凍り付いた。彼の口から間違いなく日奈という言葉が聞こえた。

 原口日奈は元カノだという妹さんの話が現実だとよくわかった。

 交際を隠しているのは私。彼は母と一度会っている。それなのに、私は本当のことを伏せた。

 彼は問い詰めないでくれている。でも、おかしいと思っているだろう。

 日奈さんと妹の里香さんは未だに連絡を取り合う仲だ。

 玲さんと日奈さんは事務所に別れさせられただけで、ご家族も知った仲ならいくらでも復縁できる関係なのだろう。

 じゃあ、私は……彼のくれた指輪を見つめながら、深いため息をついた。

 
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