彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
玲さんは母に会ったとき、違和感を感じたはずだ。
私はボーイフレンドもいないし、母は私の知り合いという彼が現れて、相当驚いたはずだ。
きっと不審者扱いして、色々と失礼なことを彼に質問しただろう。
彼のことだから、母の様子を見てわざと琴乃との関係を伏せてくれたのに違いない。
琴乃は自分達の将来にまるで光が見えないことを、玲の電話で再認識した。
電話が終わったんだろう。シャワーの音が聞こえてきた。
琴乃は着替え始めた。
玲との出会いから交際まで、まるで夢のようだった。夢を現実にできないのは、琴乃の方に問題がある。
彼の気持ちを疑ったことはなかったが、琴乃はこのままでは彼を不幸にしてしまうかもしれないと考え始めた。
「あれ、琴乃?もう着替えたのか?シャワーを浴びてきたら?」
シャワーを浴びた玲はバスローブで入ってきた。彼の壮絶な色気に琴乃はとっさに目を反らした。
先ほどの電話のこともあり、琴乃は早口でごまかした。
「お腹もすいたし、早く初詣に行かないと遅くなってしまうので……」
玲は琴乃の腕を引くと胸の中に抱き寄せた。琴乃はいたたまれなくてその中から逃げようとした。
「私、シャワーを浴びてないから……」
すると、ぎゅっと彼の腕が琴乃を抱きしめた。シャボンの香りと彼の体温が琴乃を包み込んだ。
「琴乃、何かあった?どうしたんだ?」
勘の鋭い玲に何もかも見抜かれてしまう。琴乃は笑顔を作り、彼を見た。
「何もないけど、玲さんのせいでお腹がすいちゃった」
「誰かさんのせいで、昼間からちょっと運動が激しすぎたかな?」
数十分後、ようやく初詣に向かった。
夜なのに大勢が列をなして並んでいる。
「そんなに長く頭を下げていて、いったい何を願ったんだい?」
「……色々です。玲さんは?」
彼は茶目っ気のある瞳を輝かせてこちらを見た。
「それはもちろん、早くこっち勤務になって毎晩琴乃と……いてっ!」
私が彼の腕をつねったら、彼は私の手をとり上げて握った。