彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「どちらも特別できるわけじゃない。君はスポーツ推薦なんだろう。実業団を目指しているのかい?」

「そうですね。まだこれからですけど……」

 すると、玄関のドアが開いた。母が立っていた。

「ふたりとも深夜に玄関先で大きな声を出したらだめよ。ご近所に迷惑よ。あら、あなたは……」

 お母さんは私達二人だけだと思ったんだろう、玲さんがいると気づいて口に手を当てて驚いていた。

 彼はお母さんの方へ行って丁寧に頭を下げた。

「こんばんは。先日は夜分突然大変失礼しました」

 お母さんは私を見て、彼を見た。

「今日の約束って、その人とだったのね。先日はこちらこそ沢山お土産を頂いてすみませんでした」

「あの、僕は……」

 玲さんが何か言おうとしたので、私は彼の前に出てお母さんに言った。

「藤堂さんは久しぶりに日本へ戻ってきたのでお会いしたの。今日は遅いし、また今度きちんと紹介するね。玲さん、送ってくれてありがとうございました。気をつけて帰ってください」

「……あ、ああ。じゃあ失礼します。弦也君も……」

「はい。なんか、玲さんすみません。またゆっくりぜひお話したいです」

 私の様子を見て、弦也が申し訳なさそうに答えた。

 彼は私を見て、頭を下げて帰って行った。

 * * *

「弦也、そんなマフラー持っていたの?ブランドのじゃない?」

「あ、これはもらったんだ」

「もしかして……」

 私が目くばせすると、恥ずかしそうにうなずいた。彼女にもらったんだろう。弦也は先月誕生日だった。

 私は弦也のコートとマフラーを先に預かって、玄関にあるコート掛けへかけてあげた。そのあと、私もストールを外して、コートをかけた。
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