片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
「そうなんだ?」

 薊は酒のツマミとして注文した木綿豆腐を箸で突っつき、穴を開ける。
 こうしてストレスを発散したあと、どこか遠くを見つめて言葉を紡ぐ。
 それを聞いた私は、やるせない気持ちを抱いた。

「圭信が一番弱ってる時、そばにいられたらよかったんだけど……。今さら夫婦として支えたいとか、烏滸がましいよね……」
「何言ってるのよ。せっかく結婚したのに。今さら離婚するなんて言うのだけは、止めなさいよ」
「でも……」
「どうせ一緒に居たところで、あんた達がうまくいくことはなかったでしょうし……」
「そうかなぁ……」
「ええ。きっと、嫌いになっていたでしょうね」

 あまり顔色の変わらない彼女が暗い顔をしたのであれば、相当深刻だったのだろう。
 ――見たいような、見たくないような。
 なんとも言えない表情をしていると、彼女はもしもの話をしてくれた。

「仕事中に突然電話がかかってきて、今すぐ会いたいって呼び出されたら?」
「イルデンにいる間は、電話なんて繋がらないよ?」
「電話に出るまで、鬼のように着信履歴が残り続ける。そんな状況、あんたは耐えられる?」
「うわぁ……」
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