片想い歴20年 エリート警視は同級生に激愛を注ぎ込む
「あのさ、圭信……」
「いいだろう。僕がとっておきの服を選んでやる」
「そうじゃなくて……」
「今はこれを着て、しっかりと胸元を隠すように」
「ええ……?」

 残念ながら、間に合わなかった。
 彼は身につけていたグレーのジャケットを手慣れた様子で脱ぐと、丁寧に私の両腕を掴んで肩にかけてくれる。
 胸元が隠れるように、ボタンを下から上まできっちりと止める介護っぷりだ。

 何もそこまでしなくたっていいのにね。
 ここには、気心の知れた同級生しかいないのだから……。

 ワイシャツにネクタイを身に着けた状態で隣の椅子に座り直した彼は、涼しい顔で烏龍茶にチビチビと口をつけ始める。
 どうやら私に上着を身につけさせて、満足したようだ。

「ちょっと待ってよ。私、そんなつもりはなかったんだけど……?」

 サイズの合わないジャケットからは、彼の匂いが漂ってくる。
 そのせいで、嫌でも毎晩狭い寝台の上で抱きしめ合って眠る光景を思い出してしまう。

 ――大好きな人の香りに上半身が包まれているのは、安心するし……。
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