花かげに咲く、ひとひらの恋

第2部 遠いひと、近い夢

そして私は、自然と――

王宮の庭園に足を運ぶようになっていた。

「……綺麗。」

紅く染まった橋を渡ると、その先はまるで楽園のようだった。

色づく葉と、水面に浮かぶ花の影。

すべてが、静かに、心を和らげてくれるようだった。

そのとき――

「ふふふ、陛下。」

明るく柔らかな笑い声が、風に乗って届いた。

霞様の声だった。

私は思わず足を止め、橋のたもとにある木陰に身を潜めた。

視線の先にいたのは、蒼 光陛下と、皇后・霞様。

「――霞。待ってくれ。」

陛下が霞様の手を追って、そっと指先を取る。

「ここにね、新しい花が咲いているのよ。」

霞様がそう言って、橋の欄干に咲く白い小さな花を指差した。

その指先を、陛下がやさしく包む。

ふたりの世界。

入り込む余地のない、私の届かない“本物の恋”が、そこにあった。
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