花かげに咲く、ひとひらの恋
「――君は、妃の役割をどう捉えている?」

それは、ふいに皇帝陛下がお尋ねになった言葉だった。

澄んだ声で、まるで試すように、けれどどこか寂しさを湛えていた。

私は思わず背筋を伸ばした。

「はい。皇帝陛下をお支えし、跡継ぎを儲けることかと存じます」

一瞬の沈黙ののち、陛下は小さく笑みを浮かべられた。

「……優秀な答えだな。」

誉め言葉のはずなのに、なぜか胸が苦しくなった。

これでは、誰でも言える、形ばかりの妃でしかない。

私は恐れを振り払い、言葉を継いだ。

「……陛下を、癒すのも……妃のお勤めかと。」

その瞬間、温かな指が私の手に重なった。

驚いて見上げると、陛下はまっすぐに私を見つめていた。

「――そなたが、私の癒しになるか」

その問いには、心の底からの願いがにじんでいた。

私はそっと頷いた。

「……はい」

恋に落ちてしまったから。

私は、この方の側にいたい。

たとえそれが、“ただのひと時”で終わるとしても――。
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