花かげに咲く、ひとひらの恋
そして、私が後宮に入ったその日――
今日が、妃として迎えられた初夜となるはずだった。
宦官に身を清められ、寝衣に着替え、静かに灯された部屋で、私は陛下を待ち続けた。
けれど、時が過ぎても、扉が開くことはなかった。
私はふと立ち上がり、誰に止められるでもなく、夜の廊下をそっと歩き出した。
庭を抜け、月明かりに照らされた石畳の回廊を行く。
そして――
皇后陛下のお部屋の前を通りかかった、その時だった。
「……ああ……」
艶めかしい声が、夜の静けさを破って響いた。
思わず立ち止まり、襖の隙間から目にしたのは――
皇后・霞様を抱く、皇帝陛下の姿だった。
「……今日は、蕾花の初夜では?」
霞様の小さな声が聞こえる。
「分かっている……だが、そなたを放っておけん。」
陛下はそう言って、霞様の髪を撫でた。
私は、その場から音もなく背を向けた。
今日が、妃として迎えられた初夜となるはずだった。
宦官に身を清められ、寝衣に着替え、静かに灯された部屋で、私は陛下を待ち続けた。
けれど、時が過ぎても、扉が開くことはなかった。
私はふと立ち上がり、誰に止められるでもなく、夜の廊下をそっと歩き出した。
庭を抜け、月明かりに照らされた石畳の回廊を行く。
そして――
皇后陛下のお部屋の前を通りかかった、その時だった。
「……ああ……」
艶めかしい声が、夜の静けさを破って響いた。
思わず立ち止まり、襖の隙間から目にしたのは――
皇后・霞様を抱く、皇帝陛下の姿だった。
「……今日は、蕾花の初夜では?」
霞様の小さな声が聞こえる。
「分かっている……だが、そなたを放っておけん。」
陛下はそう言って、霞様の髪を撫でた。
私は、その場から音もなく背を向けた。