茨の冠は恋を知る
第2話 悪役令嬢の反撃は薔薇色に

──奪われた舞台、今度は私が主役になる




 「悪役令嬢」としてリシェル・エレノア・ディアノルトの名は社交界に知られていた。
 高慢で冷徹、笑わない令嬢。婚約者を蔑ろにし、妹を虐げる冷血女。
 ──どれも、事実ではなかった。
 けれど人々は、美しいものに与えられた悪評を喜ぶ。

 前世、彼女の初めての社交界デビューは、その噂のせいで徹底的に潰された。
 誰も話しかけず、侮蔑の視線を投げ、セシリアは天使のような微笑で姉の不出来を“憐れむ”振りをした。

 

 けれど今は違う。

 

 リシェルには“契約婚約者”がいる。
 しかも相手は、第二王子カイル・ヴァレンティウス。
 その名があるだけで、周囲の視線が変わることを、彼女は知っていた。


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