【完結】バツイチですが、恋人のフリをお願いした年下イケメンくんからアプローチされて困ってます!
【眞紀人目線】



「父さん……っ」

 病院から父さんの容態が急変したと連絡が来た時、俺は悟った。 きっと父さんは、もういなくなってしまうと。
 俺をたった一人で育ててくれたのは、父さんだった。 そんな父さんが、もうすぐいなくなる。
 俺のたった一人の、大切な家族。 父さんが病気になってから、俺は父さんのために出来ることをしたいと思った。
 
 父さんが喜んでくれることをしたいと思っても、なかなか難しいことはわかっている。 気が付いたら、余命残りわずかの父さんと会話をすることも難しくなっていった。
 父さんと話したいことはたくさんあるのに、話すこともあまり出来なかった。 俺は父さんに、少しでも恩返しが出来ているのだろうか。

 そっと父さんの手を握ると、まだ暖かい温もりがある。だけどこの手を握れるのは、今日で最後かもしれない。
 父さんは今、何を考えているのだろうか。 余命が残りわずとはいえ、この命が後どのくらい持つのか、俺にはわからない。
 担当医の先生からは、今夜が峠かもしれないと言われた。 父さんの残りの人生、楽しいことはどのくらいあったのだろうか。

「……父さん、親不孝な息子でごめんな」

 俺がこんなだから、俺は父さんにたくさん迷惑をかけた。 たくさん心配もかけた。
 だけど父さんのことは嫌いじゃなかった。むしろ尊敬してたし、感謝してた。
 男手一つで俺を育ててくれたことは、感謝でしかない。

「父さん、苦しいよな」

 父さんはまともに話すことも出来なくなり、呼吸することも難しくなった。今は人工呼吸器を繋いでいる。
 もう父さんが笑うこともないかもしれない。

「……父さん、苦しい思いさせてごめんな」

 見ているこっちも、苦しくなる。
< 98 / 112 >

この作品をシェア

pagetop