その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
やっとの思いで絞り出した言葉に、神堂先生は吹き出した。

「なにそれ。当たり前じゃん。」

その笑いが、意地悪で、どこか挑発的だった。

「今さら王子様とか魔法の指輪とか、そんなのに頼らなくても、恋って爆発するんだよ。電車の中とか、職場のコピー機の前とかさ。」

私は黙って頷いた。

でもその奥で、彼の言葉が熱を持って沈んでいくのを感じた。

「じゃあ、岸本さん。さっき俺に“任せる”って言ったよね?」

「……はい」

「だったら、今から君を恋させる。そしたら、俺は書ける。」

――え?

それは、冗談で? それとも――。

私が言葉を失っていると、神堂先生は小さく笑った。

「君、真面目すぎ。もっと崩れていいよ。恋ってそういうもんだから。」

氷がとけて、グラスの中で沈む音がした。

私は自分の心のどこかが、すこしだけ軋んでいるのを感じていた。
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