その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
神堂先生は、グラスの縁をゆっくり指先でなぞりながら、目を細めた。

「条件?」

「……もし、私が交際を断ったら、新作を書いていただけないという意味ですか。」

その瞬間、彼の唇が、皮肉げに持ち上がった。

「そういうことになるね。」

――なんて人。

私は思った。心の中で、何度も。

この人は、本当に、恋愛と仕事を平気で混同する。

私の戸惑いなんて、どこ吹く風だ。

「その……私との恋愛を、ネタにするということなんでしょうか。」

少し震えそうになる声を抑えながら、必死に問い返した。

神堂先生は、あっさりとうなずいた。

「うん。面白いでしょ。」

あまりにも当然のように言われて、返す言葉を失った。

「今、ここで始まった“疑似恋愛”が、リアルな恋になっていく。編集者と作家。立場も立場で、微妙な関係。でも感情が動いて、やがて熱が入って、ベッドに入って――その過程、全部書く。俺はそれを、小説にする。」

「……」
< 17 / 61 >

この作品をシェア

pagetop