その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「岸本さん。君、何も提供せずに、“神堂慧の物語”がもらえると思った?」

瞳の奥に、静かに揺れる炎。

その熱に、私は声を出すことすら忘れていた。

神堂慧は、恋の相手としても――

作家としても、悪い男だ。

だけど、怖いほどに魅力的だった。

「……分かりました。」

そう口にした瞬間、自分の声が少し震えているのが分かった。

「交際しましょう。」

その言葉に、神堂先生はニヤッと笑った。

その笑みは、どこか獲物を仕留めたような、危険な光を孕んでいた。

でも、私は負けない。

ここからが、私の“条件”だ。

「ですが、あくまで小説のネタとして、です。」

「ふうん?」

「それ以上の関係は……ご遠慮願います。」

神堂先生は一瞬だけ眉を上げて、それからグラスを置いた。

そして――突然、私の髪に手を伸ばした。

その指先が、さらりと前髪を撫でる。

指の腹が、額にふれた。

「……本気になるなってこと?」
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