その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
けれど神堂先生は、どこか面白そうに笑っていた。

「うん、そこがいいんじゃない? “恋を知らない女”が編集って、俺のテーマにはぴったりだよ。」

「……そんな……」

否定しかけたけれど、できなかった。

図星だったから。

でも、だからこそ負けたくなかった。

「私は、恋を知らないぶん、丁寧に恋を想像してきました。誰よりもリアルな言葉を、届けたいと思ってます。」

「へえ。期待してるよ、“恋を知らない編集者”さん。」

神堂先生の視線が、まるで探るように私をなぞった。

そのとき私はまだ気づいていなかった。

“恋を知らない”という言葉が、これほどまでに私の心を揺らし、やがて私自身の恋の始まりになるとは。

「もう、ほんと。神堂先生。」

編集長が笑いながら、神堂先生の肩を軽く叩いた。

「こいつに恋愛のいろはを教えてやってくださいよ。たぶん、ファーストキスもまだだと思いますから。」

「編集長っ、それはさすがに……!」
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