その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
翌日。

会社のデスクでパソコンを開いてはいたけど、指は止まっていた。

視線は画面を見てるはずなのに、心ここにあらず――

“レストラン パニエ”

スマホの通知履歴が、まるで恋文みたいに脳内で反芻されていた。

「おい、岸本。」

声に我に返ると、編集長が廊下から手招きしていた。

「……あ、綾香先生の原稿……!」

慌てて立ち上がろうとしたとき、隣の席の杉本さんが、すっと口を挟んだ。

「それは私がやります。」

あ、そうだった。

「……そう、でした。」

私はぎこちなく腰を下ろしたまま、机の端を指でなぞった。

(私はもう、綾香先生の担当じゃない。)

わかってる。でも、まだ体が慣れない。

彼女の原稿に触れない日々が、すでに少し寂しい。

すると編集長が、少し声をひそめながら私の方へ寄ってきた。

「……で? 神堂先生はどうなってる? 書き始めたか?」

はぁ⁉
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