その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「昨日、登場人物決めたばっかりなんですけど……」

「何言ってんだよ、人気作家はスピードも売りの一部だろ。早く火をつけろ、火を。」

火って。

私、マッチでも持ってるとでも思ってるの?

(こっちは火どころか、やっと点いた灯に手をかざしてるだけなのに……)

「……わかりました。今日、打ち合わせありますので。夜に。」

「おっ、いいねいいね。」

編集長はにやにやとした顔で、私の肩を叩いて去っていった。

その一言に、周囲の視線がちらちらと向けられる。

杉本さんも、私を横目でちらりと見て――何も言わずに書類に視線を戻した。

私は深く、息を吐いた。

神堂先生との“交際”が、小説のためだって言い切ったのは私なのに。

それを、周囲がどう受け取るかなんて、もう止められない。

そして夜。

“レストラン パニエ”での約束が、

すぐそこに迫っていた。
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