その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「……遊ばれたんです。身も心も許して、気づいたら溺れてて。……気がついたら、私だけでした。」

神堂先生は、表情を変えずに身を乗り出してきた。

「それで?」

「……ご察しの通りです。浮気されて、別れました。」

私は視線を外し、手元のグラスに口をつけた。

赤ワインの苦味が舌の奥に染みていく。

「……浮気されたってわかった時は、どんな気持ちだった?」

「どんなって……裏切りですよ。」

即答したつもりだった。でも、神堂先生は首をかしげる。

「悲しいとか、怒りじゃなくて?」

――そう問われて、私はふと、返す言葉を失った。

裏切られた。それは確かにそうだけど。

本当に感じたものは、悲しみだった? 怒りだった?

それとも、ただ自分が“価値のない女”だと突きつけられたような――

私は初めて、自分の痛みの名前を探し始めていた。
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