その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「先生は?」

そっと尋ねると、神堂先生は無言でワインをおかわりした。

その手の動きが、ほんの少しだけ重たく見えた。

「先生は……どんな恋を?」

彼はグラスを見つめたまま、遠くを見ていた。

「……報われなかったよ。」

「え……?」

神堂先生でも、報われない恋なんて――

そんな想像をしたことがなかった。

「年上の人だった。でも、その人……結婚しちゃってさ。」

私は思わず息を止めた。

「……諦めたんですか?」

問いかけると、神堂先生は少しだけ、寂しそうに笑った。

「諦められなかった。結婚してからも……関係は続いた。けど、ある日彼女が旦那さんの子供を妊娠したって言って……それで、終わった。」

静かに語られるその声に、胸がじわりと締めつけられる。

神堂先生が“恋”を遠ざけていた理由。

それが、ようやく、わかった気がした。
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