その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
運転手さんの言葉に、背中を軽く押された。

心の準備なんてできてない。

でも、逃げるわけにもいかない。

「お客さん、乗らないの?」

私は目をつぶって、小さく叫ぶようにして乗り込んだ。

「えいっ!」

ドアが閉まる。隣には神堂先生。

一気に現実味を帯びてきた“今夜”。

震える手を、膝の上で握りしめた。

この先にあるのは――恋? それとも……。

神堂先生も静かにタクシーに乗り込んできた。

「森山方面で。」

「えっ?なんで知ってるんですか?」

驚いて振り返ると、先生も目を丸くした。

「君も⁉」

まさかの展開に、お互い顔を見合わせて笑った。

タクシーは静かに動き出し、夜の街を進んでいく。

窓に映るネオンの光が、先生の横顔を柔らかく照らした。

「先生……いつから執筆、してくれますか?」

「うん、明日くらいから始めようと思う。」

その言葉に胸が躍った。ずっと待っていた、担当としての一言。
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