その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「家に行きたいなんて、男からしたら、ラッキーチャンスだよ。」

その言葉に、頭から火が出そうだった。

「だ、大丈夫です!」

慌ててバッグで顔を隠した。

「神堂先生以外の男の人に、言った事ありません……」

そう呟いたとたん、私の手に温もりが落ちた。
――えっ?

神堂先生が、私の手を握ってる。

「いいの? 俺で。」

ゆっくりと振り向いたその目は、いつもより真剣で。

「俺、君のこと……」

その先を聞く前に、タクシーが静かに止まった。

「お客さん、着きましたよ。」

ドアが自動で開き、涼しい夜風が流れ込む。

私は――このまま降りるべき?

それとも……?

「美咲ちゃん……」

「神堂先生……」

車内の空気が甘く揺れたそのとき、運転手さんがちらっとルームミラーで私たちを見た。

「美咲ちゃん、降りて。」

「は、はいっ。」

慌てて降りると、先生も一緒に降りてきて、タクシーは去って行った。

残されたのは、私と先生、そして夜の静けさだけ。
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