その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
……うまい。

悔しいけれど、やっぱりすごい。

心のどこかで、昨夜のことが“ネタ”だったかもしれないと疑っていた。

けれど、この文章に触れた瞬間、私の中の編集者の目が動き出す。

この作品は売れる――そう直感した。

そしてなにより、この物語のヒロインの描写が、どこか私に似ていた。

先生……私を、本当に見てくれていたの?

私の鼓動は、また彼の言葉に踊らされていた。

「岸本、どうした?」

編集部のデスクから声がかかった。振り返ると、いつものように書類を片手にした編集長が立っている。

「これ、神堂先生が送ってくれた、今回の小説の書き出しなんですけど……」

私はスマホの画面を差し出した。編集長はそれを見て、ふっと眉を上げる。

「はー、オシャレ!」

「ですよね……」

読み進める編集長の目が、真剣になる。

「よくこんなこと、書けるな。同じ男として尊敬するよ。」

なにそのコメント。少し笑ってしまいそうになった。
< 57 / 61 >

この作品をシェア

pagetop