その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「まあ、だから売れるんだろうけどな。」

編集長がため息混じりに言うその言葉に、私は複雑な気持ちを抱えた。

売れる、確かにそうかもしれない。けど――

(私は、売れるための“素材”だったのかな)

小さく息をついた。胸の奥に沈殿していた疑問が、またじわりと浮かんできた。

だけど、読み返すと、やっぱり文章は美しかった。

あの夜のことも、まるで宝石みたいに輝いていた。

それが、たとえフィクションの始まりだったとしても。

(……ずるいな、神堂先生)

私はそっとスマホを握り直した。

もう少しだけ、この物語に付き合ってみよう。

そんな気がした。

そして続けてスマホが鳴った。

今度は、私の私用のスマホだ。

「神堂先生……」

スマホを握りしめたまま、私はしばらく動けなかった。

“昨夜の続きはいつ?”

その一文が、心をくすぐるように響く。昨夜の――あの夢みたいなキス。
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