その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
私の髪に触れて、頬に手を添えて、「本気の恋をしよう」と言ってくれたあの人の言葉。

けれど同時に、編集者としての自分が冷静にささやく。

(でもそれ、全部ネタじゃなかったの?)

神堂先生の言葉は、いつも詩的で、感情を揺さぶる。

でもそれが“文章力”なのか、“本音”なのか、私にはもうわからない。

胸に広がる期待と不安。

どちらも、まるで恋の原稿用紙みたいに、真っ白なまま。

私はゆっくりとスマホを操作し、短く返した。

“どっちの続きですか?”

送信ボタンを押した指が、少しだけ震えていた。

その数秒後――すぐに既読がついた。

(お願い、ネタじゃありませんように……)

画面の向こうで、神堂先生がどんな顔をしているのか。知りたいけれど、怖くて知りたくない。

そんな想いで私は、返事が来るのをじっと待った。

まるで初恋の告白をしたあとのように、心臓がトクトクとうるさく鳴っていた。
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