Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
4、愛しい人よGood Night (5/☆)
それから一週間余りが経ったある日の晩酌の時間。
菫子は笑顔で旦那様と向かい合っていた。
「どうぞ」
「おおきに」
グラスに注ぐと冷えたビールがこぽこぽと泡立った。
「うまー」
涼の分だけビールを注ぎ、自分のグラスにはお茶を注いでいる。
「俺一人だけすまんな」
かちゃんと高い音を立ててグラスを合わせる。
「元々そんなにアルコールが得意じゃないしいい。
涼ちゃんももし外で飲みたくなったら飲んできていいよ」
「……俺を飲みに誘うって同僚以外はあいつしかおらんやんけ」
思い当たる人物は菫子の診察をしてくれた医師。
去年の夏に菫子が大学病院に行った縁で顔見知りになり
今年になってからちょくちょく会っている。
見た目で言えば恐ろしいほどの美形で魔性の男。
内面は繊細かつ不器用で人間らしいやつだった。
(……親友とかいう人間とは飲みに行ける仲やなかったな)
「行けばいいじゃない。
クールで無理しなきゃいけない付き合いより
本音を語れるマブダチがいいわよ」
菫子も大体知っているためそんなことを言ってくる。
「……隣り合って座りたくないんや。理由は言えんけど」
「私も先生の奥様と遊ぼうっと。
お互い土日休みだし、また土曜日にでも」
「女の子同士仲良くする方がええと思うで。
こないだも遊んで楽しかったやろ」
「うん。妹みたいな友達」
ビールを飲み干し、愛妻の顔を見つめる。
子供ができてから表情が少しずつ柔らかくなった気がする。
「菫子、ありがとう」
検査を受けた日は有給を取り休んだ。
普段は使わないのでこういう大切なときに使おうと決めていた。
「……お礼を言うのはこっちの方よ。
この間の検査の時もちゃんとお礼言えてなかったし」
椅子を立ち涼の頬に口づける。
「ありがとう。大好きよ……」
涼は力強く菫子を抱きしめた。
「……安定期来るまでは気ぃつけんとあかんのは
分かってるんやけど、菫子が可愛すぎて
愛しさが溢れてどうしょうもない」
「そう言ってくれるだけで胸がいっぱい」
「……会社は予定通り育児休暇を取るわ。
福利厚生がしっかりしてて産休も育児休暇も取れるところにしたんだもの」
「俺はどっちでもええよ。
菫子と子供を養う甲斐性くらいはあるし」
「うん」
涼は涙を流す菫子の頬にキスをする。
涙よりも熱い唇が、涙を乾かしてゆく。
秋も深まってきた十月の夜のことだった。