Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
5、with you(2)
「やりすぎたか」
涼は、さすがに反省していた。
罪悪感が胸の中に渦巻いている。
菫子が可愛すぎてついからかいたくなるのだ。
それだけならよかったのだろうが、
あろうことか大事な約束を忘れてしまった。
「何やったっけ」
本気で頭を抱えた。
ここ一ヶ月仕事が妙に忙しく、疲れ果てて帰ってきていた涼は、
菫子に癒しを求めていた。
平たく言えばからかいと言う名の愛情表現をしていたのだが。
はしゃぎすぎが祟った。
「あれか!」
ぱっと頭の中に約束が、浮かんだ。唐突過ぎるほど唐突に。
それは一ヶ月前の記憶。
忙しかったとはいえ、忘れていた自分が、信じられない。
そんなに前のことでもないのだ。
『今年の12月24日は金曜日なのね』
『去年のイブ懐かしいな』
『うん、何かすごく昔みたい。あっという間だったもん』
菫子は一年前を懐かしみながら今年のことに思いを馳せていた。
目の輝きが違う。
きらきらとの表現がぴったりくる。
『24日は仕事で遅なるかもしれんわ。25日に埋め合わせでかまわん? 』
『お仕事ならしょうがないよ。それに25日がクリスマスだもん。
前夜祭なんていらないんじゃないって思ってたし』
笑顔だが声に寂しそうな響きがあったのは否めない。
言わせているのは自分だ、と涼は情けない気分だった。
『二人だけで過ごすラストクリスマスやもんな。
心に残るクリスマスにしたる』
『楽しみにしてるね』
『ホテルのディナーの予約しとくか。今からでも間に合うよな』
『ディナー!』
『思いっきり嬉しそうやな』
『特別な時じゃないと行けないから嬉しいの』
『土曜日だし休みやから……朝から出て』
『おでかけしましょ』
『ぷっ。そうやな』
『じゃあ私も今から行きたい場所とか考えておかなきゃ』
『どこでも連れてったるで』
そう言った時の菫子は、花が綻んだ笑顔だった。
口を開けて屈託なく笑っていた。
胸に焼きついた笑顔を、忘れていたなんて。
しかもつい一週間前、菫子は可愛い
ワンピースを見つけたから買っちゃったのと、見せてきた。
へえ珍しいななんて笑いながら
ふわりと母性が滲んできた優しい姿に目を細めていた。
あの時は今日の前振りだったのだ。
こっちが忘れていないと信じていたから、何も言わなかった。
「……今日ほど自分で自分を最低と思ったことはないな」
自嘲し涼はベッドから降りた。