Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外編「運命の人」
このまま想い続けていても報われるの?
ひと目で惹かれたのは、初めてだった。
合コンから1ヶ月、もやもやする想いを抱えていた。
あの時、彼と少し話したけれど
結局、他の女の子と消えるのを見送ってしまった。
学部が違うけど、同じ大学内で開かれた合コンだったから、姿を見かけるのは覚悟していた。
彼女と一緒にいなくても、常に誰かと一緒にいた。
偶然見かけるにしても頻度が高い気がして、戸惑いが隠せない。
(なんで……行く先々にいるのよ)
「……久しぶりやな?」
前置きもなくそう告げた彼。
とても背が高くて見あげなければ視線が合わない。
厚めのくちびるは微笑みを形作っていた。
「覚えてるの? 少し話しただけなのに」
「覚えてる。かわいい子が一人残っとったから」
じっ、と睨みつける。
人一人分の距離を開けて、彼は座った。
ベンチに座っていた私は、うろたえる。
逃げるのもおかしい。
(背の高い綺麗な子と消えたじゃない。今もその子と付き合ってるんでしょ)
「名前、言ってなかったな。俺は草壁涼や。あんたの名前は?」
そういえば名前は聞いていなかった。
「……柚月菫子」
「学年は一緒やんな。あの時は同学年の集まりやったし」
「みんなノンアルしか飲んでないわよね。でもあんなに盛りあがってて逆に醒めたわ」
「相手を探しに来たんとちゃうん?」
「人数合わせに頼まれて興味本位。話したでしょ」
「せやろな。合コンなんて行くタイプに見えへんし」
「決めつけないでよね! 」
(あの時も同じこと言われて二度目だ。なんで絡んでくるの)
「きっかけがないと何も始まらんやん。出会いなんてそんなもんやろ」
この人は何が言いたくて声をかけてきたの。
こっちは話してるだけで心臓が落ち着かなくなってるのに。
「……経験談ね」
うつむくことなく彼を見つめる。
強く見つめることで気づかれてしまうかもしれない。
気づいてほしいけど気づかれたくない矛盾。
「草壁くん」
「……友達なら下の名前で呼んでほしいな」
膝の上で拳を握りしめる。
「は? いつから友達になったのよ」
「さっき名乗りあったとこから」
差し出された手を掴むか迷う。
この恋は難易度が高そうだ。
彼の真意が読めないままだけど、
そばにいられる最適な距離を望めるならば。
(関西弁の人ってコミニュケーション能力が高いのかしら?)
「涼ちゃん」
「……ちゃんづけなんて初めてで新鮮やわ」
照れたような笑顔に目を背けた。
「菫子」
小さく肩が弾んだ。
(友達なら苗字呼びでよかったのに、
ノってしまった自分の愚かさを嫌悪する)
高い位置から振ってくる低い声は、
耳に心地よくて振り払えない。
「涼ちゃん、彼女と仲良くね!」
「……ありがとう」
「じゃあね」
それが、涼ちゃんと二度目に話した日だった。
合コンの時は名前も知らずこのとき初めてお互いの名前を認識した。
それから少しずつ話すようになり軽口を叩ける仲にはなった。
もどかしい距離のまま一年以上を過ごし奇跡が起きた。
かわいいと友達に気軽に言える彼は、
付き合ってからはさらに甘くなり俺様の風情も見せてきた。
ひと目で惹かれたのは、初めてだった。
合コンから1ヶ月、もやもやする想いを抱えていた。
あの時、彼と少し話したけれど
結局、他の女の子と消えるのを見送ってしまった。
学部が違うけど、同じ大学内で開かれた合コンだったから、姿を見かけるのは覚悟していた。
彼女と一緒にいなくても、常に誰かと一緒にいた。
偶然見かけるにしても頻度が高い気がして、戸惑いが隠せない。
(なんで……行く先々にいるのよ)
「……久しぶりやな?」
前置きもなくそう告げた彼。
とても背が高くて見あげなければ視線が合わない。
厚めのくちびるは微笑みを形作っていた。
「覚えてるの? 少し話しただけなのに」
「覚えてる。かわいい子が一人残っとったから」
じっ、と睨みつける。
人一人分の距離を開けて、彼は座った。
ベンチに座っていた私は、うろたえる。
逃げるのもおかしい。
(背の高い綺麗な子と消えたじゃない。今もその子と付き合ってるんでしょ)
「名前、言ってなかったな。俺は草壁涼や。あんたの名前は?」
そういえば名前は聞いていなかった。
「……柚月菫子」
「学年は一緒やんな。あの時は同学年の集まりやったし」
「みんなノンアルしか飲んでないわよね。でもあんなに盛りあがってて逆に醒めたわ」
「相手を探しに来たんとちゃうん?」
「人数合わせに頼まれて興味本位。話したでしょ」
「せやろな。合コンなんて行くタイプに見えへんし」
「決めつけないでよね! 」
(あの時も同じこと言われて二度目だ。なんで絡んでくるの)
「きっかけがないと何も始まらんやん。出会いなんてそんなもんやろ」
この人は何が言いたくて声をかけてきたの。
こっちは話してるだけで心臓が落ち着かなくなってるのに。
「……経験談ね」
うつむくことなく彼を見つめる。
強く見つめることで気づかれてしまうかもしれない。
気づいてほしいけど気づかれたくない矛盾。
「草壁くん」
「……友達なら下の名前で呼んでほしいな」
膝の上で拳を握りしめる。
「は? いつから友達になったのよ」
「さっき名乗りあったとこから」
差し出された手を掴むか迷う。
この恋は難易度が高そうだ。
彼の真意が読めないままだけど、
そばにいられる最適な距離を望めるならば。
(関西弁の人ってコミニュケーション能力が高いのかしら?)
「涼ちゃん」
「……ちゃんづけなんて初めてで新鮮やわ」
照れたような笑顔に目を背けた。
「菫子」
小さく肩が弾んだ。
(友達なら苗字呼びでよかったのに、
ノってしまった自分の愚かさを嫌悪する)
高い位置から振ってくる低い声は、
耳に心地よくて振り払えない。
「涼ちゃん、彼女と仲良くね!」
「……ありがとう」
「じゃあね」
それが、涼ちゃんと二度目に話した日だった。
合コンの時は名前も知らずこのとき初めてお互いの名前を認識した。
それから少しずつ話すようになり軽口を叩ける仲にはなった。
もどかしい距離のまま一年以上を過ごし奇跡が起きた。
かわいいと友達に気軽に言える彼は、
付き合ってからはさらに甘くなり俺様の風情も見せてきた。