Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外編「運命の人」(2)
「涼ちゃん、覚えてる? 前は私をあんた呼びしてたこと」
あれから四年。
大学を卒業して3ヶ月。
結ばれてからは2年が経とうとしていた。
友達として二年も関わっていたが、どちらも想いを秘めていたなんてずっと知らなかった。
「今はお前のくせにね」
あんたって言われたのも嫌ではなかった。
付き合い出してからは、愛称もつけられたし、
お前になったけど、こっちが素なんだと分かった。
(また別の一面を知った。友達と恋人では距離感が違う)
「そんなことどうでもええやん」
「あんたって歌を思い出したのよ」
「歌ってほしいなぁ。サビの最後のところを特に聞きたい」
雨の憂鬱も吹き飛ばせるだろうか。
甘えたようにねだってくる涼ちゃんに、
逆らえない私がいる。
「あんたが好きなんよ」
声がかすれたのは照れたせいだ。
私の正面にいる人は片手で顔を覆いつつ。
「あかん。可愛すぎてどうにかなる」
呻くように言った。
「そこまで照れられたら、こっちが恥ずかしいわよ!」
「菫子」
名前を呼ばれたら続きの言葉がある。
「照れてるんとちゃうで」
「涼ちゃん?」
「おいで」
腕を引かれた。
勢いが強かったので身体の上に乗る体勢になった。
(恥ずかしい)
見上げたら、とても艶めいた眼差しがあった。
顎を掬われる。
顔が下に向けられて唇が重なった。
吐息が、溶けそうなキス。
何度か啄んで離れた唇は、とても熱い。
いつの間にか横抱きにされていた。
「……心臓の音、響いてる。意識したんか?」
「離してくれていいわよ」
「よう言うわ」
涼ちゃんは、吹き出した。
それからまたキスをして。
「菫子がめっちゃ好きやねん」
「……溜めて言わないでよ」
私の憎まれ口なんて効かない。
「好きやで」
何回も言わなくていいから!
「最近、分かってきたことがあるんやけど」
「今、すごいドヤ顔してるわよ」
「……菫子が俺に抱かれたいタイミング」
「殴っていいかな!」
腕を動かせない状態では、何もできない。
「昔のこと語りながら、好きを再確認したりしてほんまにいじらしいわ」
「……あの頃は本当にどうなるか分からなくて。
それでも涼ちゃん以外にかっこいいって思う人もいなかったから……。悲しい終わりでも」
「運命の人ならたった一人、あなただけだって」
見上げた顔は泣き笑いの表情をしていた。
「……幸せやな。ツンデレ乙女、最高」
しみじみとした口調。
「……っ、余計なこと言わないの!」
「もう一回言うてや」
「何を?」
耳打ちされた言葉に頬を赤らめる。
「好きなんよ」
「普段は、訛ってないのに方言使われるとたまらんな」
それを言うなら涼ちゃんの共通語も心臓に悪い。