Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

外伝「好きな人と親友とのクリスマス」(3)

「草壁く……涼ちゃん」
「どっちやねん。くんでもちゃんでも
 菫子に呼ばれるならうれしいけど」
「……こんな時間に何の用なの。
 私、寝る前に少し勉強しようかと思って」
「照れてるののごまかしちゃうやろな?」
「照れてない! 早く用件を言ってよ」
「クリパせん?
 永月と三人で集まって。
 嫌やなかったら俺の部屋か……それかカラオケででも」
 伊織はその話を涼ちゃんに持ち掛けたのか!
「伊織と三人なら……。
 あ、涼ちゃんのお家でたこパしない?」
「ええで。タコ焼き機の話、覚えてたんやな」
「うん。クリスマスたこ焼きパーティー楽しみ」
「……俺ら、周りに恵まれとるな。感謝せんと」
 はしゃいでみせる私に涼ちゃんは、低い声で言った。
 
 クリスマスタコ焼きパーティーの準備のため、
 買い物に行くことになった。
 伊織は飲み物とケーキを用意してくれているということで、
 メインのタコ焼きの買い物は私と涼ちゃんで行くことになった。
「伊織と買い物行きたかったな」
「……菫子の憎まれ口も嫌いやないで。
 本心は別の所にあるしな?」
「行きたかったんだって」
 急に二人きりにされるとどうしていいかわからない。
 今更、避けたりこの集まりを拒むことはないのだけど。
「……な、何するの……ううっ」 
 高い位置から見下ろされほっぺたを大きな手に挟まれる。
 にらみつけたら彼は笑った。
「隙見せすぎや」
「何よ。でかぶつ!」
「痛くもかゆくもないわ」
 そんな風に言い合っていると涼ちゃんの部屋の近くのスーパーにたどり着く。
「このタコって悪口よね。イカとは言わないし」
「くっ……早めに買い物終わらせんと。
 永月と駅で待ち合わせやろ」
「そう」
 涼ちゃんは大学四年になって中古の車を買ったけど、
 まだ初心者マークなので誰も乗せていない。
 たこ、キャベツ、ネギ、天かす、ソース、紅ショウガと
 買いそろえ電車に乗った。
 揺れる電車の中、荷物を持ってくれたのは身体の大きな友達。
「……二人で持ってもいいよ」
 口にしてしまいはっ、とする。
(よくない。彼女みたいなことはしちゃいけない!)
「荷物は、この先も俺が持つから菫子はそんな俺の側(そば)におって」
「う、うん」
 これからもに意思を感じて不覚にもドキドキしてしまった。


「伊織、お待たせっ」
 荷物を持っていないので余裕で抱きつける。
 私の抱擁を受け止めた伊織は背中に腕を回し微笑んだ。
 待ち合わせた涼ちゃんの最寄り駅。
 伊織は白いコート姿にエコバッグを下げていた。
 ストレートの黒髪も背に流していて今日も端正ないでたちだ。
「ふふっ。草壁君、うらやましいでしょ」
「女の子同士のかわいい触れ合いにジェラシーなんて抱かんって」
「私たちは、絆が強いのよ」
「ねー」 
 涼ちゃんをおいてけぼりにして手を繋ぐ。
「右手は草壁君ね」
「なっ。横並びで三人は歩けないでしょ」
「一瞬繋ぐだけやろ。俺らはお姫様を守るナイトやし」
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