Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

外伝「好きな人と親友とのクリスマス」(4)

 涼ちゃんはためらいなく私の右手に手を重ねる。
 左側には伊織がいて妙な構図になった。
「私が伊織を守るの」
「もう守ってくれてるから」
 くすっと笑う伊織に照れてしまう。
 両側を二人に挟まれた時間は一瞬で終わる。
 にぎやかに話していると涼ちゃんの住処(すみか)にあっという間にたどり着いた。
「いらっしゃいませー」
 涼ちゃんが自分の部屋の鍵を開けると陽気に話した。
「本当は二人きりがよかったのにごめんね」
「……次来る時は二人きりやろうし?」
 ボソッと言った涼ちゃんを上目遣いに睨んだ。
 これからお家に上がるのに無礼なのは承知だけど。

「たこ焼きってお店のもおいしいけど
 手作りって自分たちが焼いているから特別よね」
「うん。ここにたこ焼きの師匠がいるし」
「たこ焼き奉行よね」
「じゃかあしい……焼けたのから食べろ」
 全部焼いてくれるという涼ちゃんに任せて二人でその様を眺めている。
 涼ちゃんは仕切ってくれて見事にたこ焼きをスムーズに焼いた。
「たぶんケーキは食べられないわ」
 タコ焼きは、まだ焼かれ続けている。
「ホールやなくてショートケーキやろ。
 一個ずつ持って帰ればいいやん」
「一個ずつ別包装にしてもらってよかったわ」
 伊織は用意してくれていたというビニール袋に
 三人分のケーキを分けた。飲み物も別の袋に入れてある。
「永月ってアルコールいけるの?」
 涼ちゃんはスパークリングワインのボトルを手にしていた。
「飲めるわよ。でもお誕生日がまだの菫子に悪いから」
「いいの。二人は飲んで。私はシャンメリーをいただきます!」
「じゃあ遠慮なく」
 涼ちゃんはスパークリングワインをグラスに二つ注ぎ、
 私のシャンメリーもグラスに注いでくれた。
「乾杯っ」
 グラスを合わせて口につける。
 三人とも楽しそうで今日は集まってよかったと思った。
「草壁君、去年も菫子の話を聞いてたし、
 もっとぐいぐいいく肉食系だと思ってたわ」
 ほろ酔い加減の伊織はいつもでは言わない直接的なことを言い出した。
(飲めるけど強いとは言ってなかった)
「い、伊織?」
「……永月、酔うてるな」
 涼ちゃんの顔色は変わっていない。
 そういえば二度目の飲み会でも結構飲んでいた記憶がある。
「送り狼になってもいいんじゃない」
「酒飲んでるし今日はもう出かけられへん」
「じゃあ菫子が今日泊ればいいのよ。記念のクリスマスになるわよ」
「無理!」
 ふわふわした伊織は新鮮でどこか色っぽさもあるが、
 危険かもしれないと感じた。
< 126 / 145 >

この作品をシェア

pagetop