Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外編「初詣での遭遇、ふいうちのキスとバレンタイン」(4)
「……なんでそんなに罪なほどかわいいんや」
涼ちゃんはため息をついてこちらを見てきた。
「私一人からしかもらえそうにないならあげてもいいわよ」
「……母親からとは別で?」
「お母さんのは受け取ってあげて!」
「菫子からの特別なチョコを楽しみにしとくで」
にっ、と笑った彼の方を見つめていられなくて視線をそらした。
「その代わり手作りじゃないからね。覚えといてね」
「もらえるだけでうれしい」
そんな風に言われたらこっちこそうれしい。
膝に置いた手に骨ばった大きな手が重ねるのを感じた。
あったかくてやさしい手だと感じた。
「本命やろ?」
試すような物言いの涼ちゃんに怯む。
「どっちか楽しみにしといて!」
にやり。挑発するような笑みに少しだけ怖くなって強く眼差しをぶつけた。
がやがやとした喧噪よりもっと大きな心臓の音が鳴り響いている。
和服ではなくトレーナーに皮のジャケットとジーンズ。
今日もバイクに乗ってきたのだろう。
少し心配だけど彼のバイクに乗る姿は、とても好きだった。
(悔しいくらいかっこいいのよね)
「場所を移動せえへん?」
「お参りしてきたしいいよ」
差し出された手を迷いもなく取る。
「足が疲れたらおぶってやるから歩いて行こ」
「おぶってくれなくていい」
神社から抜け出した。
彼は近くに会った自販機で缶コーヒーを買うと、私に一個くれた。
うれしくて上着の裾を掴む。
二人で歩いて公園へたどり着いた。
高い背を見上げてうつむく。
見下ろすわけじゃなくて、彼は視線を合わせてくれる。
ベンチに座る。
今度は少し距離が離れていた。
缶コーヒーを開ける音が響く。
「そういや今更なんやけど、
大学で再会した時、自己紹介したやん?」
「したわね……うん」
「俺の名前にちゃんづけしようと思ったんはどうして?」
「一見ちゃんづけが似合わなさそうなんだけど……
草壁くんって呼ぶのはしっくりこなくて。
涼くんって呼ぶのも違和感があったの。
そう考えて出てきたのが涼ちゃんって呼び方」
「俺も柚月って呼ぶのもあれやったし、
自然と名前呼びにしてた。でも」
「それ以上言わなくていい。
近づきたくても近づけなかった時間は超えたんだから」
膝の上で手を握りしめた手に大きな手が重なる。
「……菫子」
ふいに名前を呼ばれ、見上げる。
涼ちゃんはため息をついてこちらを見てきた。
「私一人からしかもらえそうにないならあげてもいいわよ」
「……母親からとは別で?」
「お母さんのは受け取ってあげて!」
「菫子からの特別なチョコを楽しみにしとくで」
にっ、と笑った彼の方を見つめていられなくて視線をそらした。
「その代わり手作りじゃないからね。覚えといてね」
「もらえるだけでうれしい」
そんな風に言われたらこっちこそうれしい。
膝に置いた手に骨ばった大きな手が重ねるのを感じた。
あったかくてやさしい手だと感じた。
「本命やろ?」
試すような物言いの涼ちゃんに怯む。
「どっちか楽しみにしといて!」
にやり。挑発するような笑みに少しだけ怖くなって強く眼差しをぶつけた。
がやがやとした喧噪よりもっと大きな心臓の音が鳴り響いている。
和服ではなくトレーナーに皮のジャケットとジーンズ。
今日もバイクに乗ってきたのだろう。
少し心配だけど彼のバイクに乗る姿は、とても好きだった。
(悔しいくらいかっこいいのよね)
「場所を移動せえへん?」
「お参りしてきたしいいよ」
差し出された手を迷いもなく取る。
「足が疲れたらおぶってやるから歩いて行こ」
「おぶってくれなくていい」
神社から抜け出した。
彼は近くに会った自販機で缶コーヒーを買うと、私に一個くれた。
うれしくて上着の裾を掴む。
二人で歩いて公園へたどり着いた。
高い背を見上げてうつむく。
見下ろすわけじゃなくて、彼は視線を合わせてくれる。
ベンチに座る。
今度は少し距離が離れていた。
缶コーヒーを開ける音が響く。
「そういや今更なんやけど、
大学で再会した時、自己紹介したやん?」
「したわね……うん」
「俺の名前にちゃんづけしようと思ったんはどうして?」
「一見ちゃんづけが似合わなさそうなんだけど……
草壁くんって呼ぶのはしっくりこなくて。
涼くんって呼ぶのも違和感があったの。
そう考えて出てきたのが涼ちゃんって呼び方」
「俺も柚月って呼ぶのもあれやったし、
自然と名前呼びにしてた。でも」
「それ以上言わなくていい。
近づきたくても近づけなかった時間は超えたんだから」
膝の上で手を握りしめた手に大きな手が重なる。
「……菫子」
ふいに名前を呼ばれ、見上げる。