Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

外伝「あの日の二人と妹弟」(2)

爽くんの右、窓側の席に座る
 咲来に厳しい言葉を投げかける。
 彼女に対して塩対応なので昔ブラコンだったのが想像できない。
「そんくらいいいやん。母さんも父さんも涼兄に
 神戸グルメをごちそうしてもらえって言ってたで」
 涼ちゃんは苦笑していた。
「まあ……気が利かんのは私やけどな。
 そもそも中三が旅行にお菓子持参するかな思っててん。
 菫子ちゃんみたいな気遣いできるようになりたいわ」
「二人と一緒に旅ができるの楽しみにしてたのよ」
「菫子ちゃん。私の膝においでぇ」
「アホやろ! 飛行中に何考えてんねん」
「涼兄、咲来姉の悪ノリだよ」
「爽くん、落ち着いてるわね!」
 一応声を潜めているが、にぎやかな四人組が
 通路越しにかたまっていた。
「旅行は旅行やけど、田舎への里帰りやで。
 目的はばあちゃん家や」
「分かってる。おばあちゃんに
 晩御飯作ってあげるもん。
 菫子ちゃんも一緒に。ね」
「うん。ごはん食べた後スーパーに寄って行くわ。
 おばあちゃん、どんなものが好きかなあ」
「菫子ちゃん、グルメスポットもあって、
 お土産も買えてスーパーもある商業施設あるよ」
 爽くんがにこにこ教えてくれ、下調べした場所を思い浮かべた。
「うん。あそこ行こう」
「大学の卒業旅行みたいなもんなんよ。
 ほんまは一緒に行きたい人おったんやけど
 断られたんよね」
「付き合ってる人?」
「ちゃうよ」
 しみじみ言うから、付き合っている人とどこかへ
 行くつもりだったのかと思ったけど違った。
「……異性ではイチオシのかわいい子やったな。
 二年ちょい前、大学で涼兄たちを目撃した時も
 あの子と一緒やったわ」
「声かけてくれればいいのに」
「涼兄ににらまれて声かけられへんかった」
 吹き出す咲来に、涼ちゃんは遠い目をした。
「……大学でまできょうだいに会いたくねえよ」
「こういう時だけ共通語やねん」
「何でだろ」
「感情を押さえる時は、なまりを出さんようにしてるんやで。
 たぶん間違いない」
「東京に住んでるから訛らない時あるんじゃなかった?」
「それだけじゃないんやて……ぶっ」
「……ええ加減大人になってくれん。
 お前は22やろ」
「ここできょうだい喧嘩はやめてよ。
 15歳の子が一番大人ね」
「……うちのきょうだいって仲がいいよね」
 爽くんは通路の向こう側から、私の手を握った。
 私は握手をして手を離す。
「そうね。私はきょうだいがいないから
 こういうの楽しいわ」
「菫子は弟分なんて作って仲良しになったやろ」
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