Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
外伝「あの日の二人と妹弟」(5)
涼ちゃんのおばあちゃんの家に行くまでに
商業施設(ショッピングセンター)で、食材を買うことにした。
涼ちゃんは高校時代、この土地で三年間過ごして東京に戻ってきた。
三年間、一緒に暮らしたという女性はどんな人だろう。
確か、母である美耶子さんのお母さんだ。
「緊張してきた」
「そんな緊張するような相手やないで。
明るくて陽気な人やし。
菫子なんて猫かわいがりしてもらえるわ」
海岸を散歩している時、ふいにもらした私に対し
涼ちゃんは快活な笑顔で励ましてくれる。
爽くんと咲来は、別行動をしおばあちゃんのお家で
合流することになっていた。
現在は結婚秒読みの恋人とふたりきりである。
夕陽がまぶしいが、冬なので砂浜をはだしで歩いても平気だ。
靴とストッキングを脱いではしゃぐ。
涼ちゃんはゆっくりと後ろを歩いている。
「……クリスマスからあっという間ね。
年末休みももう明日で終わりか」
「俺らは続いていくんやしええやん」
大きな手が差し出されおずおずと掴む。
夕陽に照らされ伸びた影の長さは、二人の身長差を現していた。
「そうね。あっけなくバイクに乗るのやめたのは驚いたなあ」
「二人で出かけるのには不便やん。遠出も車の方がいいし」
「卒業してすぐ車を買ったよね。
涼ちゃんの運転する姿を初めて見た時新鮮だった」
「ドキドキしたんか?」
「バックするとき、助手席のところに腕を回すのってわざと?」
砂浜に木の枝で適当に絵を描き始める。
棒人間で、涼ちゃんと私を描いたらちょっとむかっときた。
(でかい……)
「ちゃう」
一言、否定されたがあれは何度経験しても心臓がばくばくする。
「体格差のせいだと思うけど、
腕の中に閉じ込められてる気がするの」
「こんな?」
背をかがめ肩に腕を回される。
足が不安定になるのに私を羽交い絞めする彼は、
とても楽しそうだ。
悔しくても好きだから抵抗しない。
「……一(ひと)つ聞きたいことがあるの」
「一(ひと)つだけやで」
耳に落ちてくる声に頬までほてらせているのが気づかれませんように。
(あなたといればちっとも寒くないのよね)
「別に前に付き合ってる人がいたことなんてどうでもいいの。心底どうでも」
「それ前置きなん?」
おかしそうに言われ、口ごもる。
「……あなたが高校時代を過ごした土地にいるからか
気になって仕方がなくて。
涼ちゃん、あの合コンに参加する何か月前に前の恋が終わったの?」
恋人と別れたという言い方はできなかった。
わざわざ好きな人の過去を覗こうとするのもどうかと思うが、
色々乗り越えてきた彼のことを少しだけ知りたいとも感じていた。
恋愛面とは別でも彼はスキンシップが豊かで
人と距離を縮めるのも格段にうまい人だ。
商業施設(ショッピングセンター)で、食材を買うことにした。
涼ちゃんは高校時代、この土地で三年間過ごして東京に戻ってきた。
三年間、一緒に暮らしたという女性はどんな人だろう。
確か、母である美耶子さんのお母さんだ。
「緊張してきた」
「そんな緊張するような相手やないで。
明るくて陽気な人やし。
菫子なんて猫かわいがりしてもらえるわ」
海岸を散歩している時、ふいにもらした私に対し
涼ちゃんは快活な笑顔で励ましてくれる。
爽くんと咲来は、別行動をしおばあちゃんのお家で
合流することになっていた。
現在は結婚秒読みの恋人とふたりきりである。
夕陽がまぶしいが、冬なので砂浜をはだしで歩いても平気だ。
靴とストッキングを脱いではしゃぐ。
涼ちゃんはゆっくりと後ろを歩いている。
「……クリスマスからあっという間ね。
年末休みももう明日で終わりか」
「俺らは続いていくんやしええやん」
大きな手が差し出されおずおずと掴む。
夕陽に照らされ伸びた影の長さは、二人の身長差を現していた。
「そうね。あっけなくバイクに乗るのやめたのは驚いたなあ」
「二人で出かけるのには不便やん。遠出も車の方がいいし」
「卒業してすぐ車を買ったよね。
涼ちゃんの運転する姿を初めて見た時新鮮だった」
「ドキドキしたんか?」
「バックするとき、助手席のところに腕を回すのってわざと?」
砂浜に木の枝で適当に絵を描き始める。
棒人間で、涼ちゃんと私を描いたらちょっとむかっときた。
(でかい……)
「ちゃう」
一言、否定されたがあれは何度経験しても心臓がばくばくする。
「体格差のせいだと思うけど、
腕の中に閉じ込められてる気がするの」
「こんな?」
背をかがめ肩に腕を回される。
足が不安定になるのに私を羽交い絞めする彼は、
とても楽しそうだ。
悔しくても好きだから抵抗しない。
「……一(ひと)つ聞きたいことがあるの」
「一(ひと)つだけやで」
耳に落ちてくる声に頬までほてらせているのが気づかれませんように。
(あなたといればちっとも寒くないのよね)
「別に前に付き合ってる人がいたことなんてどうでもいいの。心底どうでも」
「それ前置きなん?」
おかしそうに言われ、口ごもる。
「……あなたが高校時代を過ごした土地にいるからか
気になって仕方がなくて。
涼ちゃん、あの合コンに参加する何か月前に前の恋が終わったの?」
恋人と別れたという言い方はできなかった。
わざわざ好きな人の過去を覗こうとするのもどうかと思うが、
色々乗り越えてきた彼のことを少しだけ知りたいとも感じていた。
恋愛面とは別でも彼はスキンシップが豊かで
人と距離を縮めるのも格段にうまい人だ。