Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
外伝「あの日の二人と妹弟」(9)
見下ろしてくる瞳は、情熱的であらがえない熱を灯していた。
私が彼を焚きつけてしまったようだ。
ツインではなく、ダブルの部屋を取っておいて
添い寝だけは味気ないということだろうか。
一応、彼は紳士だからお風呂は別々で私に先に入らせてくれた。
涼ちゃんの部屋以外に泊まるの初めてで、
心臓の音が鳴り響いている。
「お風呂、気持ちいい」
義理の妹と弟との旅はにぎやかで楽しかったし、
二人で初めて歩いた海岸は、青く輝いていた。
冬だから寒くても差し出された手はあったかくて、
高い背を見上げて笑いかける。
(ちゃんと笑えてたかな。身長が違いすぎるから、
見上げるというより上目遣いに睨んじゃう気がする)
ツンデレとか言われてからかわれるけど、
そういう姿は涼ちゃんしかしらない。
涼ちゃんよりも付き合いが長い伊織には気が強いと言われたことがある。
「帰ったらまた別々の暮らしね」
ほんのり寂しい気持ちはあるが仕方がない。
お互いの妥協点をすり合わせて決めたことだ。
結婚までもう少しだからそれまで壊れないようにしたい。
そういえば二か月前に会った見目麗しいカップルも
結婚するまで一緒に暮らしたりしなかったと言っていた。
妖しい雰囲気さえかもしている中世的な美形と、
涼ちゃんとその人いわく私とも性格が似ている美女とは、
また一緒にお茶を飲んだりしたい。
身内も含め周りは素敵な人であふれている。
お湯を掬うとちゃぷん、と音が立つ。
そろそろ出た方がいいだろうか。
お風呂から上がったら、受付の所で取ってきたお茶でも飲もう。
コンソメスープの自販機もあったし……
そういえば夜カレーが頼めた気がする。
お風呂から上がり着替えをする。
洗面台に置かれていたドライヤーで髪を乾かした。
部屋に戻ったら涼ちゃんが、ベッドの端に座り待っていた。
「……すみれが夜食するっていうんなら付き合うで」
明日着るはずの服に着替えている私を見て彼は笑った。
示し合わせてはいないが涼ちゃんも服に着替えている。
二人ともホテルのルームウェアで部屋から出るのは抵抗があった。
「こうしてみると涼ちゃん、
めっちゃかっこいいよね」
「俺がかっこよくて忘れられんかったんやなかった?」
「自意識過剰すぎてはずかしい!」
「……菫子が自信持たせてくれてるんやで」
ぐ、と手を引かれて部屋の外に出た。
少しだけ足がもつれたので彼の服の裾を掴んだ。
エレベーターの中で手を繋がれる。
「菫子がちっさいから好きになったわけやないけど、
やっぱりそそられてしまうよな。
コンパスの差ってええもんや」
悦に浸る恋人は、あと二ヶ月で交際歴四年の男性だ。
顔はまったくちがうが、身長差や
雰囲気から兄妹(きょうだい)に見られることは何度もあった。
年の離れた弟と2個下の妹がいるし、
本当にお兄さんという感じの人ではある。
(どこがお兄ちゃんなのよ……。
友達の距離感でいた頃も彼は、恋愛対象の異性だった)
「昼間は変なことを聞いてごめん」
「ああ。菫子がふいに大胆なこと言うのは、
最初からやん。真顔やなくて照れてるし、
かわいげばっかしかないけどな」
「……もう。ずるいなあ」
階下についた音がしてエレベーターから降りた。
キーボックスが目の前にありルームキーはここに
ご返却くださいと記載されている。
私が彼を焚きつけてしまったようだ。
ツインではなく、ダブルの部屋を取っておいて
添い寝だけは味気ないということだろうか。
一応、彼は紳士だからお風呂は別々で私に先に入らせてくれた。
涼ちゃんの部屋以外に泊まるの初めてで、
心臓の音が鳴り響いている。
「お風呂、気持ちいい」
義理の妹と弟との旅はにぎやかで楽しかったし、
二人で初めて歩いた海岸は、青く輝いていた。
冬だから寒くても差し出された手はあったかくて、
高い背を見上げて笑いかける。
(ちゃんと笑えてたかな。身長が違いすぎるから、
見上げるというより上目遣いに睨んじゃう気がする)
ツンデレとか言われてからかわれるけど、
そういう姿は涼ちゃんしかしらない。
涼ちゃんよりも付き合いが長い伊織には気が強いと言われたことがある。
「帰ったらまた別々の暮らしね」
ほんのり寂しい気持ちはあるが仕方がない。
お互いの妥協点をすり合わせて決めたことだ。
結婚までもう少しだからそれまで壊れないようにしたい。
そういえば二か月前に会った見目麗しいカップルも
結婚するまで一緒に暮らしたりしなかったと言っていた。
妖しい雰囲気さえかもしている中世的な美形と、
涼ちゃんとその人いわく私とも性格が似ている美女とは、
また一緒にお茶を飲んだりしたい。
身内も含め周りは素敵な人であふれている。
お湯を掬うとちゃぷん、と音が立つ。
そろそろ出た方がいいだろうか。
お風呂から上がったら、受付の所で取ってきたお茶でも飲もう。
コンソメスープの自販機もあったし……
そういえば夜カレーが頼めた気がする。
お風呂から上がり着替えをする。
洗面台に置かれていたドライヤーで髪を乾かした。
部屋に戻ったら涼ちゃんが、ベッドの端に座り待っていた。
「……すみれが夜食するっていうんなら付き合うで」
明日着るはずの服に着替えている私を見て彼は笑った。
示し合わせてはいないが涼ちゃんも服に着替えている。
二人ともホテルのルームウェアで部屋から出るのは抵抗があった。
「こうしてみると涼ちゃん、
めっちゃかっこいいよね」
「俺がかっこよくて忘れられんかったんやなかった?」
「自意識過剰すぎてはずかしい!」
「……菫子が自信持たせてくれてるんやで」
ぐ、と手を引かれて部屋の外に出た。
少しだけ足がもつれたので彼の服の裾を掴んだ。
エレベーターの中で手を繋がれる。
「菫子がちっさいから好きになったわけやないけど、
やっぱりそそられてしまうよな。
コンパスの差ってええもんや」
悦に浸る恋人は、あと二ヶ月で交際歴四年の男性だ。
顔はまったくちがうが、身長差や
雰囲気から兄妹(きょうだい)に見られることは何度もあった。
年の離れた弟と2個下の妹がいるし、
本当にお兄さんという感じの人ではある。
(どこがお兄ちゃんなのよ……。
友達の距離感でいた頃も彼は、恋愛対象の異性だった)
「昼間は変なことを聞いてごめん」
「ああ。菫子がふいに大胆なこと言うのは、
最初からやん。真顔やなくて照れてるし、
かわいげばっかしかないけどな」
「……もう。ずるいなあ」
階下についた音がしてエレベーターから降りた。
キーボックスが目の前にありルームキーはここに
ご返却くださいと記載されている。