Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

外伝「あの日の二人と妹弟」(12)


メイクのノリがいい気がして、意識すると全身が朱に染まりそうだった。
涼ちゃんは朝から綺麗やかわいいを連発してくるので、
対応に困っている。
「……菫子って世界一の花嫁になるわ。めっちゃかわいい」
「ん?」
「最高の女やって言ってる」
 またキスされた。
「リップを塗る前でよかったな」
「何言ってるのよ……もう」
 メイクの仕上げはやらせてとか言うので任せたら、
 意外に上手く完成させた。
 塗られたチークとアイメイクを確認する。
「俺の女って感じでええな」
「何の独占欲よ」
「メイクせんでも菫子は素顔でも十分やけど……
 愛らしすぎてそれも困るな」
「今日はどうかしてるわよ」
「全部本音や」
 何を言ってもしょうがない。
 立ち上がり、涼ちゃんを見上げて微笑んだ。
 今度は上手くいったはず。
 なぜかため息をつかれた。
「誘惑するなや」
「してないでしょ!」

 顔を真っ赤にした私はバッグを持って部屋を出ようとした。
 すぐ後ろから長い腕がそれを取り上げたけれど。
「……あの子たちは夕方ごろ帰るんだっけ」
「そうそう。菫子と俺は、明後日から仕事やし」
「年末年始だからお高くついたし一泊よね」
「結婚したらそういうの気にせんでええもんな」
「……そこから離れて」
 ホテルの一階、受付ロビーで
 涼ちゃんの家族や、篤紀と健太にお土産を買い空港に向かった。
 東京へ帰ったら草壁家を目指した。
「美耶子さーん!」
「菫子ちゃんっ」
 玄関に出迎えてくれた美耶子さんにハグを受ける。
 涼ちゃんのお母さんである美耶子さんとは、
 彼がバイク事故で入院した時に初めて会った。
 それ以来、仲良くさせていただいている。
「おかん、ばあちゃん元気やったで。
 こっちで暮らす提案は断られた」
「知っとる。電話もらったしな。
 涼と菫子ちゃんに会えたのうれしい言ってたで」
「うん。菫子のことも気に入ってもらえた。
 結婚式には来られんから写真送るわ」
「美耶子さん、お土産のお菓子です。
 よかったら」
「ありがとう。取り寄せてまで食べへんし、
 食べるの久しぶりやわ。プリン」
 プリンの箱を渡したら美耶子さんは、私の頭をぐりぐりと撫でた。
「菫子ちゃんは初めてあった時から印象変わらへんね。
 涼にはもったいないわあ」
「そうやな。あの時も言うたけど、
 菫子がおらんと生きていかれへんのは俺や」
「そ、そんなこと言ってたの? いつ?」
「お盆休みに冷却期間を置いた時。
菫子も色々あったよな?」
「あったけど……それは話したじゃない」
「熱いお二人さん、お茶でも飲み。疲れたやろ」
「はーい。ありがとうございます」
 手伝おうとしたけど遠慮されてしまった。
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