Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
13、声を聞かせて(2)
「お邪魔します」
誰にともなく告げて、そっと歩いていく。
いつも片付いていた部屋が、乱雑に広がっていた。
まず、台所。
いつもならきちんと棚にしまわれていた食器たちが、
水きり籠に無造作に重ねられている。
今にも、落っこちてきそうでひやひやする。
洗いものを放置したりはしないのは、さすがというところだが、
洗濯機に洗濯物が入れっぱなしなのは驚いた。
くすっと笑った。
「やること増えちゃったじゃない」
洗濯機を回し始め寝室に移動した。
床に放られた衣服、くずかごから溢れたゴミが床に転がっているのが目についた。
床のゴミをくずかごに入れて、室内を見回す。
ベッドの横のチェストの上に、置かれたものに目を留めた。
「ポプリの作り方まで知ってるのね」
あの日買ったポプリはドライフラワーにされ、匂い袋に入れられていた。
生花だった時には感じなかった匂いが、ほのかに香る。
ポケットにそれを入れて、菫子は、うーんと唸(うな)る。
やらなければならないことを指折り数えて順番を決める。
「よっし」
決まったら、動きだすのは早い菫子だ。
カーテンを開き、窓を開けて換気(かんき)する。
数日の不在ながら、部屋にはよどんだ空気がこもっていた。
部屋を片付けて、掃除をする。
余計な場所に触らずに、普段使うものは分かりやすい場所に避けた。
だが、ふと興味による探究心が沸いてきて、
ベッドの下を覗く。
何もなくてちょっとがっかりした。
(案外、真面目ね。
いや……そういうの見ないのはイメージ通りかも)
「いやいや、涼ちゃんのお母さんじゃないんだから」
ぶるぶると首を横に振った。
あんな大きな息子は、ちょっと無理だ。
そう言えば、お母さんも菫子より10センチ以上高かったし、
一度だけ対面したお父さんは彼と同じくらいの背格好だった。
彼の長身と素晴らしい体格も遺伝だと思えば、
菫子の場合もこれ以上身長が伸びるのは諦めるしかない。
父親はそれなりに身長があるが、母親は菫子よりもさらに低く150センチに届かない。
がっくりと肩を落とした。
「え……こんなのいつ撮ったの」
ベッドの上、枕もとに菫子の写真があった。
寝顔なので眠っている隙に撮ったに違いない。
やけに甘ったるい表情で、いい夢を見ていそうだ。
「しかも、は……は……だか!」
顔を真っ赤にして、写真を持つ手を震わせた。
顔がアップではあるが、鎖骨に浮かぶキスマークまで
しっかりと写っているのは誤魔化(ごまか)せない。
こんなはしたない写真を枕の下に敷いて寝ていたなんて、こっぱずかしい。
それほどまでに想われているのは嬉しいが、隠し撮りされたのは心外だ。
「……涼ちゃん、早く起きないとどうなるか分かっているわよね」
物騒に呟いて、写真を元に戻す。
誰にともなく告げて、そっと歩いていく。
いつも片付いていた部屋が、乱雑に広がっていた。
まず、台所。
いつもならきちんと棚にしまわれていた食器たちが、
水きり籠に無造作に重ねられている。
今にも、落っこちてきそうでひやひやする。
洗いものを放置したりはしないのは、さすがというところだが、
洗濯機に洗濯物が入れっぱなしなのは驚いた。
くすっと笑った。
「やること増えちゃったじゃない」
洗濯機を回し始め寝室に移動した。
床に放られた衣服、くずかごから溢れたゴミが床に転がっているのが目についた。
床のゴミをくずかごに入れて、室内を見回す。
ベッドの横のチェストの上に、置かれたものに目を留めた。
「ポプリの作り方まで知ってるのね」
あの日買ったポプリはドライフラワーにされ、匂い袋に入れられていた。
生花だった時には感じなかった匂いが、ほのかに香る。
ポケットにそれを入れて、菫子は、うーんと唸(うな)る。
やらなければならないことを指折り数えて順番を決める。
「よっし」
決まったら、動きだすのは早い菫子だ。
カーテンを開き、窓を開けて換気(かんき)する。
数日の不在ながら、部屋にはよどんだ空気がこもっていた。
部屋を片付けて、掃除をする。
余計な場所に触らずに、普段使うものは分かりやすい場所に避けた。
だが、ふと興味による探究心が沸いてきて、
ベッドの下を覗く。
何もなくてちょっとがっかりした。
(案外、真面目ね。
いや……そういうの見ないのはイメージ通りかも)
「いやいや、涼ちゃんのお母さんじゃないんだから」
ぶるぶると首を横に振った。
あんな大きな息子は、ちょっと無理だ。
そう言えば、お母さんも菫子より10センチ以上高かったし、
一度だけ対面したお父さんは彼と同じくらいの背格好だった。
彼の長身と素晴らしい体格も遺伝だと思えば、
菫子の場合もこれ以上身長が伸びるのは諦めるしかない。
父親はそれなりに身長があるが、母親は菫子よりもさらに低く150センチに届かない。
がっくりと肩を落とした。
「え……こんなのいつ撮ったの」
ベッドの上、枕もとに菫子の写真があった。
寝顔なので眠っている隙に撮ったに違いない。
やけに甘ったるい表情で、いい夢を見ていそうだ。
「しかも、は……は……だか!」
顔を真っ赤にして、写真を持つ手を震わせた。
顔がアップではあるが、鎖骨に浮かぶキスマークまで
しっかりと写っているのは誤魔化(ごまか)せない。
こんなはしたない写真を枕の下に敷いて寝ていたなんて、こっぱずかしい。
それほどまでに想われているのは嬉しいが、隠し撮りされたのは心外だ。
「……涼ちゃん、早く起きないとどうなるか分かっているわよね」
物騒に呟いて、写真を元に戻す。