Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

14、LOVE SICK(☆)



 涼が、興味津々の態(てい)で見てきて、目をそらしてしまう。
 後から、羞恥がこみ上げるのは毎度のことだ。
「半信半疑だったけど、美耶子さんも期待してたから」
「へ。おかんに何言われたん」
「涼ちゃんは私にキスしてほしいんだって」
「ぶほ……っ」
 急に咳きこんだ涼の背中を慌ててさする。
 むせただけらしく、すぐに治まったが、
これほどまでに過敏に反応するとは意外だ。
「お姫様は王子様のキスで目覚めるとか言ってらしたわ。可愛い人ね」
「おもろいおばはんやろ……」
 涼は、苦笑いした。
「次は俺が、菫子を起こすから楽しみにしてて」
「ば、ばか」
「菫子の馬鹿、久々やなあ」
 しみじみする涼に、顔を赤らめた。
「涼ちゃん、目が覚めたばかりで悪いけど、聞きたいことがあるのよね」
 まなざしで詰め寄るが、意にも介さず菫子の様子を見守っている。
「枕の下に写真敷いて寝てたの? しかも裸じゃない!
 盗み撮りなんてしていつの間に撮ったのよ」
「菫子が、寝てる時に決まってるやんか。
 ええ顔してたから、せっかくやしと思って」
「せっかくじゃないわよ」
 ほとほと呆れても平然としている相手に、菫子の方が疲れを感じた。
「でも、ポプリなんて作ってたのは、感動したわ」
「菫子に渡そうと思って作り方もマスターしたんやで。
 ちょうどええから、持って帰り」
「あ、うん。もらっていいのなら」
「もちろん」
「ありがと」
 ふ、と視線が絡む。
「付き添ってくれてありがとうな」
「離れられるわけないじゃない」
 甘い雰囲気を醸し出す二人は、背後に感じる気配に一瞬固まった。
「涼、あんた……まんまと起きよってからに」
 突然割って入った声に慌てて繋いでいた手を離す。
「ええよ。そのまま」
 にんまり笑って言われ、戸惑う。
 涼がすかさず手を握りしめた。
「おかん、間を計れや」
「菫子ちゃん、ええ子やねえ。
 背もちっさいし可愛らしいわ」
「背ですか……」
「菫子ちゃんからしたらこんな大男怖ないの?」
「怖いとは思ったことないです……
 図体でかいとは常に思ってますけど」
「あはは……おもろいなあ」
 菫子は涼の母・美耶子と笑い合っている。
「この微妙に入れへん空気、何や」
「涼、やきもちは醜いわ……」
「菫子は俺の女やぞ」
「菫子ちゃん、でかい割にちっさい男やね。
 背がちっさいあんたの方が大きいわ」
 視線を感じ、菫子は頬を染めた。
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