Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

14、LOVE SICK(3)

 腕を差し出した涼に、うっと怯む。
「……はい」
 昨日ベッドの下の収納にしまったパジャマを取り出す。
 いくら選んでも、まだ普段着は着れるはずもない。
 脱ぎ着しやすいのにこしたことはないのだ。
 後ろから、パジャマを掛けると正面に回りボタンをかけていく。
 心臓がうるさく鳴り響く。顔が熱い。
 パジャマの下も履かせようとがんばるが、
やたら腕がまごついて上手くできない。
 なかなか進まない作業に笑う気配がし、
「ええよ」
 腕をそっと避けると、涼は、もたつきながらも何とか履き終えた。
 怪我をしている涼の方がスムーズなのはおかしな話だ。
「……役に立てなくてごめん」
「はよ菫子とええことしたい」
 申し訳なさそうな様子を気にしてか茶化すように涼は言った。
「えっち! 」
 切実に言われて、どぎまぎ動揺した。
 パジャマを着終えた涼はどこかすっきりとした様子だ。
「意味分かるんやもんな。菫子も同罪」
「……ん。そうね」
「めっちゃ素直や。相当抱かれたいんやな」
「抱かれたいわよ。悪い?」
「悪いわけないやろ! この腕が自由に動けば、
むぎゅうって抱き寄せるのに」
「じゃあ早く元気になってよ。毎日来るから。
 バイトも辞めることにしたのよ」
「甲斐甲斐しい……泣けてくる。
 でも、あんなに頑張ってたバイトやろ。ええんか?」
「いいわよ。どうせもうすぐ忙しくなるし、今、自由に使える時間は
 涼ちゃんの側(そば)にいたいの。一緒にいたいのよ」
「ありがとな」
 包帯を巻いた手のひらが、そっと頭に置かれた。
「考えなしに無理しとった俺の責任や。
事故ったことは、もう気に病んだりせんでええから」
「……分かった」
「よっしゃ。俺も頑張って治さんとな」
 椅子を近づけると、顔が近付いてきて頬に口づけが落ちた。
「やっぱ甘い……」
「涼ちゃん、誕生日おめでとう」
 菫子は複雑な笑みを浮かべた。
「ぐっ……微妙に嬉しくない……。この辺が痛いわ」
 胸を指し示し落ち込んだ涼に菫子はにこにこっと笑った。
「この埋め合わせは必ずしてね
 指きりげんまん。嘘ついたら針千本のーます。指切った」
 強引に指を握り、振ると、
「かわいいことすんなー阿呆」
 少し頬を赤らめた涼が、やけくそに呟いた。
「あ、涼ちゃんも阿呆とか言った」
「これも愛情表現や。うん。
 ちゃんと埋め合わせはするから、心
と体の覚悟して待っとけよ、すみれちゃん」
 語尾にハートマークが飛んでいた。
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