Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
epilogue2 15-2「Honey」(3/☆☆☆)
「涼ちゃん……」
微笑んで、背中を撫でる。
広い背中は、菫子をすっぽりと隠すことができるのだ。
手を当てて寄り添って温もりに浸る。
先に目覚めてしまうとは思わなかったけれど、
その分、眠っている涼を堪能できるのだ。
「……こんな風に私が寝ちゃっている時に写真撮ったのよね」
思い出せば、憎々しい気分になる。
散々しまえと訴えたら、ベッドサイドの引きだしに入れてくれたのだが、捨ててくれることはなかった。
あの恥ずかしい写真に限らず、菫子の写真は増え続けている。
涼の写真も菫子が持っているのでお互い様だ。
写真は二人で撮ったものは少ないが、プリクラはいっぱい撮った。
文字で遊んだりできて面白いので菫子は気に入っている。
先ほど開けて閉じていない引き出しから、プリクラが覗いている。
「……ハニーとダーリンか」
手のひらに置いた一枚のプリクラは、手を繋いでいる二人が映っている。
菫子の方にハニー、涼の方にダーリンと文字が書かれたこのプリクラは、夏ごろに撮ったものだ。
ハニーもダーリンも愛しい人への呼び名。
甘くこそばゆくて、蜜月そのものだ。
その日のデートの後は、照れと羞恥に襲われ穴に潜りたくなった。
伊織とも一度撮ったことがあったが、あの伊織が、
照れまくってしまい、結局勝手にフレームを選ばれてしまったのを思い出す。
困った顔の彼女は可愛らしくて、それ故に貴重だった。
ベッドにうつ伏せて、色々回想していると熱が逃げていく気がした。
気がしただけで情熱の名残は、くすぶり続けているけれど、
気づかない振りをしてやり過ごすしかない。
「だって……もう」
数を口にするのは躊躇した。
「もう? 」
「わあっ」
大げさに飛びのいた菫子は、力強い腕に引き寄せられた。
抱えあげられ、涼が下にいる体勢になる。
溢れる滴を絡めるように、彼のソレが触れた。
「菫子も、無理すんな」
「してないっ」
なぞる動きに、荒い息を吐き出す。
「強気やな? 」
涼がいきなり入りこんできたので、背を反らした。
「……ええ反応」
菫子が独り過去の思い出を回想している隙に準備を終えていたらしい。
肌に触れる指が、かすかに動く。
「……ま、まっ……て」
「準備万端(ばんたん)のくせしてよう言うわ」
それも、無駄な抵抗だった。
菫子も自覚していることをわざわざ口にして、逃げ道を塞ぐ。
ごくん、と息をのみこむ。もはや、抗うことなど無意味だ。
彼を深く感じられて、自分自身も感じさせられるよう動けばいい。
考えるというより、心で感じるままに。
リズムは掴めているのだろうか。
上下に揺れるしかできない。
涼は、もっと上手に菫子を波に乗せてくれるのに。
「大丈夫……」