Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外「唇の上に愛情のキス」☆☆(Treasure本編後)
涼(りょう)ちゃんが好き。
涼ちゃんといる時間が好き。
涼ちゃんと交わすキスが好き。
甘い香りと共に、赤い花びらが視界に飛び込んでくる。
真紅(しんく)の花びらは、とても優雅(ゆうが)な雰囲気だ。
今日この日の為に用意された薔薇が鮮やかに目に映る。
涼を見上げれば、瞳を細めてこちらを見ていた。
爪先立ちでも、間に合わない距離が未(いま)だに悔しい。
ヒールが、足から浮いてほとんど脱げている状態に頭上から笑う声が聞こえてくる。
べただけど心のどこかで憧れていたことを実現してくれた涼に、何も言えなくなった。
悔しいくらい完璧な演出にぐうの音も出ない。
アルコールなんて口にしていないのに、頭の奥が痺(しび)れてぼうっとしていた。
涼と一緒に過ごす聖夜。
普段は行くことができない素敵なホテルを予約してくれた。
ご飯を食べて、今は予約していた部屋の中。
きっと忘れられない夜になるだろう。
そんな夜にしようと思った。
今日のために涼がどれだけ頑張ったのか知ってる。
会う時間を割(さ)いてバイトに励んだ。
その事を照れながら話してくれた。
去年の春みたいな無茶はさすがにもうしない。
あの時事故まで起こして三日も目を覚まさなくて息もつけなかった。
睡眠と食事はちゃんと摂って無理はしないことと
約束してもらって、菫子(とうこ)は影で見守ることができた。
会えない時間はせつなかったけれど、
頑張る姿を想像しては、力をもらっていた。
理由を告げずバイトに勤(いそ)しんだ過去を
涼は悔いていて、今は菫子の気持ちを理解してくれている。
浮気を疑うことは一度もなかった。
電話とメールで連絡を取り合って、くだらないことでも何でも話す。
ありがとうと面と向かって言うのは照れるから、耳元で囁(ささや)いた。
それだけでもきっと伝わるって信じて。
無理して背伸びしたせいで足元がふらついた。
バランスを崩した菫子の身体を長い腕が、抱きとめる。
「マニュアル通りの女って可愛いわ」
「分かりやすくて悪かったわね」
憎まれ口を叩いてみても本心じゃないって知られている。
顔が真っ赤だ。
二人の間の間で押し潰されかけてる薔薇と同じくらい。
はらりと一枚、花びらが落ちた。
きつく抱きしめられて、花束を持ったままだった腕が、広い背に回る。
「悪いなんて言ったか? 可愛いって俺は言ったんやで」
視界が曇る。
(やだ。泣いてしまうなんて。こんな顔、見られたら最悪だわ)
幸い、肩に頬を寄せてるから見られることはないけど、声で気づかれている。
涙で肩も濡らしてしまっていた。
「隙のない女より、隙を男に見せる女の方がええ。
完璧になろうとするな。
俺もお前も足掻(あが)いてもがいて無様(ぶざま)なまま進んでいこう」
こくりと頷いた。