Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
番外「唇の上に愛情のキス」(3/☆☆)
目が覚めると窓には藍色の景色が映っている。
もうすぐ夜明けが来るのだ。
髪を撫でて涼の寝顔を見ながら、
「メリークリスマス、涼ちゃん」
囁いた。聞こえてなくてもその笑顔に免じて許してあげよう。
頬に落とした口づけに気づかれませんように。
朝が来て目を覚ました二人は、互いに向き合った状態だった。
いつもいたずらに髪をもてあそんでいる涼に、
菫子は、戸惑いながらも結局好きにさせていた。
最後はいとおしむように撫でてくれるからいいのだ。
「普段もあれ位甘えてくれたらええのになあ」
「冗談言わないで」
しっかりと菫子を腕の中に閉じ込めた体勢で、のたまう。
抱えやすい体格差は便利らしい。
「だって可愛いんやもん。涼ちゃんって潤んだ目で甘えてくる菫子」
「ふん。どうせ普段は可愛くないわよ」
「可愛いっていつも言うてるやん。何度言わせたら気が済むんや」
ぼっと顔に火がついた。
「別にねだってない」
「ねだってもええのに」
「いやよ」
段々何を争っているのか分からなくなってくる。
「じゃあ俺がねだろうかな」
「何よ」
つい尖(とが)った口調になってしまった。
「キスして」
その満面の笑顔は何なのだろう。
非常に無邪気な表情だ。
体は大きいのに、時々子供みたいな恋人なのである。
たかがキス。されどキスだ。
面と向かって言われると照れに襲われる。
「さっきはしてくれたのになあ」
「お、起きてたの?」
「感触で気づいた」
ぽかぽか彼の肩を拳で殴った。
「ありがとな。そこ凝ってたんや。あ、もうちょい力強めでもええで」
ちっとも通じてない上に注文をつけられた。
寝てる時はかわいげがあるように感じたのに目を開けた途端に俺様モードだ。
するまで許してくれないだろうか。
ごくん。息を飲み込んだ。
(別にこっちからするの初めてじゃないんだから! )
菫子は、これが返事だとばかりに涼の唇を自分の唇で塞いだ。
焦(じ)らして返事もせずにいきなり行動に移したことに、
案の定(じょう)涼は驚いている。
目を大きく見開いたのが証拠。
キスに応えたことに安心し急いで離れようとした菫子は、
「っ……」
頭を押さえつけられ、より深く唇を重ねられてしまった。
全身の血が沸騰(ふっとう)し、体感温度が上がっている気がした。
涼の背中を叩こうとしたが、体には力が入らなくなるばかりで抵抗なんて夢のまた夢だ。
昨日の夜を思い出すかのごとき口づけの連続に勝手に甘い息が漏れる。
「し、信じられない」
やっとのことそれだけ口にできたが、言葉になっているかは定かではない。
当たり前だけど目の前にいるのは紛(まぎ)れもなく男の人だ。
時々強引で大胆な彼に振り回されっぱなしで、
これでいいのかと自分に問いを投げかけてみたりする。
やっぱり好きだからに尽きるのだ。
「好き」
「ん、聞こえへん。もう一回」
「……大好き」
息を吐き出した後、強く腕の中に閉じ込められる。
咽そうになるほどの彼の匂いに包まれて、
感じた気持ちを大切にしていたい。
唇を掠めるキスをした涼は、ふっと微笑んだ。
「菫子はええ女やな」
やっぱり涼に言われるから嬉しいんだと分かった。
他の人に言われても、心にぬくもりは灯(とも)らない。