Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)

2、Forever Mine(2/☆☆

涼が喧嘩して実家に逃げてきた時も母は、菫子の味方でいてくれた。愛されまくりだ。
 招待客に見送られ、二人は車に乗り込む。
 新婚生活を送るのだからと、貯めたお金で買った涼の赤いオープンカーだ。
 楽しそうな涼とは対照的に菫子は顔を赤らめている。
 どうやら車体にくくりつけられた空き缶が気になるらしい。
「お願い、涼ちゃん。そっと走って」
 スピードを出したりなどしたら空き缶が派手な音を立てる。
「菫子はほんまに可愛いな。皆、やってることやん。
 安心せえ。あっちゅう間にこんな所から消え去ってみせるわ」
「っ……キャー!!」
 そっとどころか猛スピードで車体は揺れた。
 一度バウンドして、激しく唸る車。
 案の定、カラカラカラと甲高い音を立てて空き缶が引きずられてしまった。
(性格と見た目のギャップが、相当激しいのよね。真面目な時はとっても真面目なんだけど)
 菫子は遠い目をした。
 菫子は、涼と付き合いだして切なくなったことはあるが、苦しんだりしたことは一度もない。
 楽しくて時が経つのも早かった。
 菫子が感慨に耽っている間に車は、ホテルへと到着していた。
 夕方頃終ったはずの結婚式だが、辺りはもう暗くなっていた。
「菫子」
 外側からドアを開けて涼が呼びかける。
「ありがと」
 手を引かれて降りる。
もう一方の手でウェディングドレスの裾を持ちながら。
「疲れた?」
「あんな運転しといてよく言うわよ」
「今日だけやから許したってや」
 ニッと笑う涼。
「もうっ!」
 ホテルの中に入り、受付を済ませると、涼はキーを掌で弄びながら、
 菫子の腕を引いた。エレベーターで最上階のボタンを押す。
 最上階に部屋は一つしかない。
 広い空間の中央にある扉をキーで開いて、中へと入ってゆく。
 広いスウィートルームの窓は全面ガラス張りで、
きらきらとした夜景が映し出されている。
 涼がこの日のために用意した特別仕様の部屋。
 菫子は侮れない人だなと驚くばかりだった。
 待ちに待ったプロポーズは、大きな決意が込められたもので、
 その後はとんとん拍子に話が進んだ。
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