Pleasure Treasure(プレジャ、トレジャ)
3、君の隣で眠らせて(4/☆)
子供ができたら育児休暇を取ると決め、社会人生活三年目を頑張っている。
逆方向なので、車で出勤する涼に送ってもらわず電車で通勤していた。
帰りの時間が合う時は涼が迎えに来てくれて一緒に帰る。
結婚前、別々で暮らしていた時も部屋まで送ってもらっていたが、
今は一緒の家に帰れる喜びがある。
もう寂しいと思わなくてもいい。
会社の昼休み。
涼は、期待に瞳を輝かせて弁当箱を開けた。
菫子のいう手抜きは、全然手抜きではないと思う。
残り物を上手く使うのも知恵だし、一目見ただけでは残り物とは
分からないほど昨日の夕食の時とは姿が変わっている。
手抜きと気づかれないようにとの発言は裏づけされたものであり、
過大評価でも試したわけでもない。
「菫子の料理は最強やな」
彼に言わせると最高ではなく最強。
どんなに落ち込んでいても笑顔に戻れる魔法のアイテム。
同僚の冷やかしや羨む声を聞きながら、涼は
自慢げに大口を開けておかずを頬張っている。
菫子は預かり知らぬことだが涼のデスクの上には菫子の写真が飾ってある。
結婚式の写真は非常識やしなと涼は言ったが、
周りに言わせればどっちもどっちだ。
どんな幸せそうで自慢げでも嫌味な感じでは
ないので必要以上のやっかみはない。
人懐っこさと男らしい快活な性格。
涼は、周りに好かれていた。
「今度、涼の家で夕飯ご馳走してくれよ。奥さんの手料理食べてみたい」
「土産持参なら考えてもええで」
「ちゃっかりしてるよな」
「うちの夕飯を食べれるんやから安いくらいやで」
冗談めかした口調の涼に、同僚の篠沢渉(しのさわわたる)は了解と頷いた。
「お疲れさま」
ビールを傾けた。
週に何度か涼は夕食後に晩酌をする。
アルコールに弱い菫子はお酌をして付き合うことの方が多い。
「今日も変わったことなかったか?」
心配性な涼は菫子に聞かれる前に自分から彼女に訊ねる。
「平穏無事な一日だったわ。涼ちゃんは?」
「変わりなく滞りなく」
「そう」
箸を一旦置いて一日の報告をする。勿論お互いの顔を見ながら。
「涼ちゃん、そういえば」
「そういえば? 」
「プロポーズの言葉ってどんなのだったっけ? 」
「まさか草壁涼一世一代の名台詞を覚えてないって言わんやろな! 」
菫子の唐突な発言に涼がいきり立った。
「血圧が上がるわよ」
「……菫子が、急にアホなこと言いだしたからや」
「イヴの夜のと大晦日のとどっちが正式だったかなあって」
「両方」
「そっか両方か」
「勿論覚えとるやろ」
菫子はグラスにビールのおかわりを注ぐ。
涼はグラスを受け取る手に力を込めた。
「私の口からはとてもじゃないけど言えないわ。やっぱり涼ちゃんが言って! 」
「しゃあないな。耳かっぽじってよう聞けよ」
逆方向なので、車で出勤する涼に送ってもらわず電車で通勤していた。
帰りの時間が合う時は涼が迎えに来てくれて一緒に帰る。
結婚前、別々で暮らしていた時も部屋まで送ってもらっていたが、
今は一緒の家に帰れる喜びがある。
もう寂しいと思わなくてもいい。
会社の昼休み。
涼は、期待に瞳を輝かせて弁当箱を開けた。
菫子のいう手抜きは、全然手抜きではないと思う。
残り物を上手く使うのも知恵だし、一目見ただけでは残り物とは
分からないほど昨日の夕食の時とは姿が変わっている。
手抜きと気づかれないようにとの発言は裏づけされたものであり、
過大評価でも試したわけでもない。
「菫子の料理は最強やな」
彼に言わせると最高ではなく最強。
どんなに落ち込んでいても笑顔に戻れる魔法のアイテム。
同僚の冷やかしや羨む声を聞きながら、涼は
自慢げに大口を開けておかずを頬張っている。
菫子は預かり知らぬことだが涼のデスクの上には菫子の写真が飾ってある。
結婚式の写真は非常識やしなと涼は言ったが、
周りに言わせればどっちもどっちだ。
どんな幸せそうで自慢げでも嫌味な感じでは
ないので必要以上のやっかみはない。
人懐っこさと男らしい快活な性格。
涼は、周りに好かれていた。
「今度、涼の家で夕飯ご馳走してくれよ。奥さんの手料理食べてみたい」
「土産持参なら考えてもええで」
「ちゃっかりしてるよな」
「うちの夕飯を食べれるんやから安いくらいやで」
冗談めかした口調の涼に、同僚の篠沢渉(しのさわわたる)は了解と頷いた。
「お疲れさま」
ビールを傾けた。
週に何度か涼は夕食後に晩酌をする。
アルコールに弱い菫子はお酌をして付き合うことの方が多い。
「今日も変わったことなかったか?」
心配性な涼は菫子に聞かれる前に自分から彼女に訊ねる。
「平穏無事な一日だったわ。涼ちゃんは?」
「変わりなく滞りなく」
「そう」
箸を一旦置いて一日の報告をする。勿論お互いの顔を見ながら。
「涼ちゃん、そういえば」
「そういえば? 」
「プロポーズの言葉ってどんなのだったっけ? 」
「まさか草壁涼一世一代の名台詞を覚えてないって言わんやろな! 」
菫子の唐突な発言に涼がいきり立った。
「血圧が上がるわよ」
「……菫子が、急にアホなこと言いだしたからや」
「イヴの夜のと大晦日のとどっちが正式だったかなあって」
「両方」
「そっか両方か」
「勿論覚えとるやろ」
菫子はグラスにビールのおかわりを注ぐ。
涼はグラスを受け取る手に力を込めた。
「私の口からはとてもじゃないけど言えないわ。やっぱり涼ちゃんが言って! 」
「しゃあないな。耳かっぽじってよう聞けよ」