バンパイア君は私に甘々でメロメロ

夏の夜風が熱気を帯びている。

「……今日は、ごちそうさま」

すみれが言うと、黒川は少し黙り、歩みを緩めた。

「先輩」

「ん?」

「さっきの、冗談じゃないですよね」

「……え?」

立ち止まった黒川の横顔は、冗談みたいな軽さがどこにもなくて――真剣そのものだった。

「さっき“もう一回なめてみる?”って言ったでしょ」

「そ、それは……仕返しで言っただけで…」

「俺、本気で我慢してたんですよ」

黒川の顔がすっと近づく。
さっきまで涼しかった夜風が、急に熱を帯びて息苦しい。

「先輩が、あんな顔で誘うから」

「誘ってない……っ!」

「嘘」

黒川はすみれの耳元に唇を寄せた。

「今から、ちょっとだ、けもらっていいですか」

「えっ…や、やだ…! 人目が…」

「大丈夫。誰も見てないです」

甘く低い声とともに、黒川の指がそっとすみれの絆創膏に触れた。
その仕草が優しくて、でも震えるほどに熱を孕んでいて――

すみれは、息を呑んだまま動けなくなってしまった。
< 11 / 46 >

この作品をシェア

pagetop